舞台の上のシンデレラは、窮屈なガラスの靴を脱ぎ捨てた。【A3！】 (ページ10)

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満開の笑顔ページ10

私のせいで一気に空気が悪くなってしまった談話室を飛び出して、最悪の気分で学校へ行った。

大阪の名門女子校からの編入生という紹介を終えれば、すぐ私に興味をもった同級生達に囲まれた。そして質問攻めにされ、疲弊しきった昼休み。

お弁当を持ってきていないため、購買で何か買おうと財布を鞄から取り出したときである。

何やら、教室の扉の前で女子生徒が何人か集まって騒いでいた。

一体どうしたのだろうかと、首をかしげていれば――

「あ、いた！Aちゃーん！」

人だかりを掻き分けて、佐久間咲也さんがひょっこりと教室に顔を覗かせた。

「遅い」
「臣から弁当、預かってきた」

更にその後ろから、女子の注目を一気に浴びる碓氷真澄さんと摂津万里さんまでもが現れて私は冷や汗をかいた。

おそらく三人のファンであろう女子達の視線が背中にぐさぐさと突き刺さる。

「一緒にお弁当食べよう！」

此方へと駆け寄ってきた佐久間さんが、満開の笑顔を見せてくれるも、女子達の刺さるような厳しい視線に負けて私は頷くことが出来なかった。

私は出来れば、目立ちたくない。

「すみません。今日は一人で食べます……お弁当、ありがとうございました」

摂津さんからお弁当を受け取り、その日、私は人気のない校舎の階段でひっそりとお弁当を食べた。