舞台の上のシンデレラは、窮屈なガラスの靴を脱ぎ捨てた。【A3！】 (ページ21)

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負のスパイラル ※6/28内容一部変更有りページ21

「いや、こっちこそ急に声かけて悪かったな」
「いえ……」

高遠さんに気を遣わせてしまったことに罪悪感を覚え、思わず目をそらす。

「そ、そういえば丞さん！さっき、AがタイマンACTのことについていろいろアドバイスくれたんですよ！」

私と高遠さんの間に流れた微妙な空気。それを察した姉さんが明るい声で、話題を変えた。

「アドバイス？ Aが？」

高遠さんが意外そうに此方へ視線を向ける。じっと見つめられた私はいたたまれずに、きゅっと身を縮こまらせた。

彼が今、どんな気持ちで私を見ているのか。それがとても怖かったのである。

役者としての道を諦めてしまった人間が、今までGOD座のトップに君臨していた高遠さんにアドバイスをするだなんて烏滸がましいにも程がある。

何もかもが中途半端な奴になんて、何も言われたくないかもしれない。
私のアドバイスなど、一ミリも役に立たないかもしれない。なんて、どんどんと思考がマイナスの方向へと傾いていく。その度に、胸が締め付けられて。ここにいること自体が苦しくなる。

「すみません、体調が優れないので私はこれで失礼します……！」
「A！」
「あ、おい！」

皇さんの顔を真っ直ぐ見ることが出来ず。あまりの居づらさに、姉さんと高遠さんが呼び止める声すらも無視して私は思わずレッスン室を飛び出した。

MANKAIカンパニーの皆さんは良い人たちばかりだが、ずっと暗い気持ちを引きずり、一人で引きこもっていた私には賑やかで、眩しすぎたのだ。

行く宛も、居場所も何処にもないけれど今はただただ、誰もいない、誰も来ない、静かな場所で一人になりたくて。そんな場所を求めて私は息が切れるのも、折角整えた髪が乱れるのも気にせずしてひたすら走った。