月に恋せよ暦ガール 【6】

月恋 第240話 【お料理レシピ】 ページ2

「今日はありがとうございました。お陰で助かりました!」

おばあさんを送り届けた帰り道。となりを歩いているあかねさんにお礼を告げた。

「そんな、お礼なんて!」

頭を下げる私にあかねさんは頬を赤く染め、両手を振って慌て出す。

初対面であり、なによりも事務所の先輩に向かって失礼かもしれないが、動作の一つ一つがなんとも可愛らしい人だと、胸がキュンッと高鳴った。

「あ、えっと、今更ではあるけど、自己紹介がまだだったよね。
初めまして、Seleasの朝霧 あかねです」

「ツキウタ。宣伝アイドルの暦屋 Aです! よろしくお願いします!」

お互い深々と下げた頭をあげ、顔を見合わせ照れ混じりの笑みを浮かべた。

あかねさんの柔らかい雰囲気がとても落ち着き、がちがちに緊張することなく話すことができた。

「ツキノ寮へ、ですか?」

「うん。今日はツキノ寮にお邪魔して、夜さんと料理のレシピの交換をする約束をしていたの」

どうやら、ツキノ寮へ向かう途中、私のおばあさんを見つけ、声をかけて下さったらしい。まさに、救世主。

「Aちゃんはお料理すき?」

「はい! 食べるのも作るのも両方すきです!」

首を小さく傾げながら訊ねてくるあかねさんが非常に愛らしい。

そんなことを考えながら、元気よく返事をする。

「良かったら、Aちゃんもお料理のレシピ交換しない?」

「いいんですか?!」

まさかの嬉しいお誘いに、思わず目を輝かせる。私に犬のような尻尾があったとするならば、今はふり千切れんばかりに尾を振っているだろう。

「もちろん! 交換してくれると嬉しいな?」

「します! ぜひさせてください!」

「ありがとう」

ぴょんぴょん跳び跳ねながら喜びを露にする私を、微笑ましいと言わんばかりに暖かい目で見るあかねさんはまるで、本当のお姉ちゃんのようだった。

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