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月恋 第200話 「か細い声」 ページ9

「はー、笑った笑った」

父さんの姿にひたすら笑った数分後、漸く落ち着いた私は先程店員さんが持ってきたばかりのイチゴパフェの前で、笑って荒くなってしまった息を整えていた。

「私の顔に、何か面白いものでもついていたのか」

あんなに慌てて真っ青にしていた父の顔色も戻り、今は何時も通りの仏頂面で私と同じイチゴパフェを食べている。だから、その真顔でパフェ食べるの止めてもらって良いですかね。面白過ぎるから。

「いや、父さんの顔じゃなくて、父さんが、その、イチゴパフェやココアみたいな甘いものを好んで飲んだり食べたりするのがあまりにも意外で、ツボにはまっちゃっただけ」

素直に突然私が笑いだした原因を父さんに伝えれば、彼はパフェを食べる手を止め、心底驚いた様に目を見開いて此方へと視線を向けてきた。

「私だって、たまには甘いものが食べたくなるときもある。悪いか?」

そして父さんは、直ぐに表情をまた気難しいものへと戻し、ゴホンと1つ咳払いをしたかと思えば、少し拗ねた様子でパフェ専用の持ち手が長いスプーンを再び手に取った。

「いや、別に。誰も悪いだなんて言ってないし」

「………お前も早く食べなさい。でないと、上に乗っているアイスが溶けてしまうぞ」

「あ、本当だ」

ばつが悪そうに視線を此方からゆっくり外した父さんが言った通り、私のイチゴパフェは、一番上に君臨している淡いピンクのイチゴアイスは、冷房が効き、ひんやりとした室内の温度でも耐えきれなかったのか、段々と溶け始めて透明なガラスの器から溢れかけていた。

一刻も早く救出せねばと、私も取っ手の長いスプーンを手に取り、パフェを食べ始める。淡いピンクのイチゴアイスがとろり、口の中に入れた途端、口内の高い温度に反応して溶け、口一杯に甘酸っぱさが広がった時である。

「………頬は、まだ痛むか」

父さんが俯きながら、か細い声でぼそりとそう呟いた。

月恋 第201話 「本音がボロボロと」→←月恋 第199話 「意外な姿」



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snow(プロフ) - 櫻餅さん» すごくキャラの性格が出ていると思います。皆の良いところが出ているなと思います。忙しいと思いますが無理せずに頑張って下さい! (2019年5月17日 17時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有難う御座います!夢主人公だけでなく、書かせて頂いているツキウタ。キャラも好きだと言って頂けてとても嬉しいです! (2019年5月17日 5時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんばんわ♪更新、ありがとうございます。やっぱり好きです。ヒロインの真っ直ぐな所も可愛いけど、他のキャラも好き。今回の話は新君らしいなって気がしました。是非、志望校に受かって欲しいなと思いました。 (2019年5月16日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - といろさん» コメント有難う御座います!また不定期ではありますが、更新頑張っていきたいと思っておりますので宜しくお願い致しますm(__)m (2019年5月15日 2時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
といろ - 再開待ってました!ありがとうございます…!これからもずっと応援しています。無理なさらぬよう、お願いします…!! (2019年5月14日 13時) (レス) id: 8af1b1e6db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年11月5日 18時

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