月に恋せよ暦ガール 【5】

月恋 第239話 「まいごのまいごの」 ページ49

「すみません、ちょっと道をお尋ねしたいんですけど」

9月最後の休日。部活を終えた帰り道の途中で、後ろから声をかけられた。

人けの無い道だからと、赤く色づいたものの、地面へとはらり落ちて積み上がり小山を作っていた紅葉を足で軽く蹴って遊んだり、本のしおりでも作ろうかと綺麗な状態の紅葉を拾ってみたり、それなりにはしゃぐ場面を見られたかと思うと恥ずかしい。

しかし、どうやら道に迷って困っているようだ。恥ずかしがっている場合ではないと、羞恥心により熱が集まり熱くなった頬を無視して振り返る。

するとそこには、腰の曲がったおばあさんが眉を八の字にし、少々困った笑みを浮かべながら立っていた。手には大きな荷物と地図が持たれている。

「ここに行きたいんだけど……お嬢さん、わかる?」

おばあさんが指で地図の一角を指し示した。

そこは道がとても要り組んでおり、ツキノ寮や学校、普段の私の行動範囲からはかけ離れた場所だ。

東京へ引っ越して1年も経たない私には、到底分からない場所であった。

素直にごめんなさい、分からないですと謝ればおばあさんは更に困った顔をした。

そのまま困っているおばあさんを放っておけず。

「良ければ私も一緒に探させてください」

ひとりよりもふたりの方が心強いと思い、そう申し出た。

「ほんとう? ありがとう。助かるわぁ」

おばあさんはさっきよりも、少しだけほっとした様に肩の力を抜いた。 道がわからず、緊張していたのだろう。

そして一緒におばあさんの目的地を探してうろちょろしていると――

「あれ? もしかしてAちゃん?」

またもや後ろから、声をかけられたのであった。

「どうしたの?」

私の名前を背後から遠慮がちに呼んだ人物。

控えめながらも、優しくSeleasを支えるしっかり者のお姉さんである朝霧 あかねさんの登場により、一気に話が進んだ。

おばあさんが行きたがっている場所。そこをたまたまあかねさんが知っていたのである。

分からなかったお詫びにと、おばあさんの持っていた大きな荷物を目的地まで持たせてもらい、あかねさんの案内のもと、3人で向かったのは――

「お二人とも、ありがとねぇ」

おばあさんのお孫さんが経営している小さな喫茶店であった。今日はそこへ遊びに行こうとしていたのだと言う。

目的地についたことで安心した笑顔を見せてくれたおばあさんに、こちらまで嬉しくなりあかねさんと顔を見合わせながら笑みを溢した。

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