月に恋せよ暦ガール 【5】

月恋 第237話 「冗談めかして」 ページ47

「あ、新さん」

「よぉ」

声の主の答え合わせをするために顔をあげれば、片手にイチゴ牛乳のパックを持つ眠たそうな新さんがそこには居た。

学校帰りなのか、ブレザーの制服姿に、肩には今にもずり落ちそうではあるがスクールバックが掛けられている。

「なにやってんだ?」

「も、紅葉狩りです」

不意に問われて、何て返そうと数秒悩んだ結果がこれである。

ブランコの上に生い茂った木々の葉は、紅葉狩りをするにはまだ緑が多い。さすがに紅葉狩りはムリがあったのでは?と後悔した。

「それはまたなんとも風流なこって」

しかし、ここでツッコミもせず、緑と赤が混じった木々を見上げながら変にノってくれるのが新さんと言う人物だ。

「で、ほんとうは?」

ノってくれたかと思いきや、突然まじめな表情に切り替えて私を見詰めてくる。本当に、マイペースで掴み所が無くこまってしまう。

「なんか悩んでるんだったら、この新お兄さんにドーンッと相談してみなさい。ためになるお言葉が聞けること間違いなし!」

新さんは気の抜ける冗談を口にしながら、ふらり、といつの間にか私のとなりにあるブランコへと腰かけた。

「ふはっ、なんですかそれ」

新さんの冗談に思わず噴き出しながら笑みを溢す。彼と話していると、自然と肩の力が抜けてくる。

「実はですね――――」

そのせいか否か。よく分からないけれど、私は新さんのペースに流されるまま、悩みを打ち明けたのであった。

志望している高校のレベルが高くて、もしかしたらムリだと笑われそうでこわい、と。

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