月恋 第232話 「まだまだ成長途中だから」 ページ42
「涙。あれ、Aちゃんと隼さんの二人は?」
心配をかけまいと溢れだし掛けていた涙をごしごし、雑に右手の甲で拭ってから涙の居る方へと振り返る。しかしそこには涙の姿はあれど後の2人、今日一緒に来ていた筈の隼さんとAちゃんの姿が見当たらず首を傾げた。
「隼とAなら、僕達の飲み物を近くの自販機で買ってから来るって。だから、僕は先にいっくんの所へ行かせて貰ったんだ」
「そうだったんだ。じゃあ、2人を迎えに行こうか。折角今日来て貰ったんだし、早く来てくれたことのお礼がしたいしね!」
らしくない空元気。でも折角応援しに来てくれた涙に、隼さんとAちゃんに心配を掛けたくない、暗い顔を見せたくない。その一心で笑顔を見せる。けれど空元気も無理矢理作った笑顔も、何時もの俺らしくないことばかりで上手く出来ない。
「いっくん」
どうしよう、そう思っていれば不意に涙が俺の名前を柔らかい声で呼び、俺の頭を左手で優しく撫でた。
「悔しかった、よね。あと少しだったのに」
涙の人を心の奥底からホッとさせるような優しい声色で紡がれた言葉がドクリッ、大きく俺の心臓と鼓膜を揺らした。
「今は僕といっくんしかいない。だから、我慢しないで。思いっきり、泣こ?」
涙の淡い光を持った瞳が俺の姿を映し、俺を安心させるように再び柔らかく笑顔を浮かべた。
「僕もいっくんもまだまだ成長途中。だから、また次、お互いに少しずつ、焦らずに頑張って成長していこう。ね?」
涙の言葉がストンッと自分の中へと自然に落ちて行き、今までどんよりと淀みきっていた心に少しずつ光が差し込んでいくような感じがした。
そうだ。この経験を活かして、悔しさをバネにしてまた挑戦しよう。それに、俺にはこんなにも心強い相方が居るのだ。だから大丈夫。また次も頑張れる。
そう素直に思えたと同時に、今まで必死に我慢していたしょっぱくて何処か温もりのある涙が次から次へと頬を伝い出していた。
「ありがとう、涙」
どうやら俺の大事な親友であり、大切な相方は何処か人の感情に鋭くて、誰よりも優しくて。素直に涙を流させるのが上手いようだ。
今は沢山泣いて。悔しい涙を流してすっきりしたら、また次も頑張ろう。頬を伝う沢山の雫達を拭いながら、俺はそう強く決意した。
月恋 第233話 「眠れない」→←月恋 第231話 「自分らしくない」
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snow(プロフ) - 櫻餅さん» すごくキャラの性格が出ていると思います。皆の良いところが出ているなと思います。忙しいと思いますが無理せずに頑張って下さい！ (2019年5月17日 17時) (携帯から) (
レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有難う御座います！夢主人公だけでなく、書かせて頂いているツキウタ。キャラも好きだと言って頂けてとても嬉しいです! (2019年5月17日 5時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんばんわ♪更新、ありがとうございます。やっぱり好きです。ヒロインの真っ直ぐな所も可愛いけど、他のキャラも好き。今回の話は新君らしいなって気がしました。是非、志望校に受かって欲しいなと思いました。 (2019年5月16日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - といろさん» コメント有難う御座います!また不定期ではありますが、更新頑張っていきたいと思っておりますので宜しくお願い致しますm(__)m (2019年5月15日 2時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
といろ - 再開待ってました！ありがとうございます…！これからもずっと応援しています。無理なさらぬよう、お願いします…！！ (2019年5月14日 13時) (レス) id: 8af1b1e6db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年11月5日 18時
