月恋 第212話 「方向音痴と過保護」 ページ22
共有ルームへと戻ってきた恋さんに電話を代わる。暫くして葉月さんとの電話が終わったのか、ガチャリ、と受話器が切れる音が耳に届いた。
「陽は何て?」
課題が散らかったテーブルの元へと小走りで戻ってきた恋さんに始さんが首を小さく傾げながら問い掛ける。
「あー、何か急な仕事の連絡が携帯に入るといけないから、携帯を奈良まで誰か届けてくれないかって」
「今からですか?」
更に私が問い掛ければ、恋さんは此方へと視線を移し、苦笑いを浮かべながら頷いた。
始さんはそれを聞き、グラビの今週の予定が書き込まれている表を、私はプロセラの共有ルームへと行き、同じくプロセラの予定表を確認し、三人で顔を見合わせる。
「グラビは新と葵は夜まで仕事。それから駆と俺と春は夕方から仕事が入っている。後、恋、お前はこの課題を片付けることが優先だ」
「プロセラは涙兄と隼兄が夕方まで仕事。海さんは昨日から明後日までロケで不在。郁兄が夜さんや葉月さんと同じく実家に帰省中です」
「残るはAだが……」
「あー、Aが残っちゃいましたか」
始さんが私の名前を出すも、眉間に軽く皺を寄せ言い淀み、恋さんは視線を下に落とす。
二人の言いたいことは大いに分かる。私だけで奈良に行かせるのは不安でしかないのだろう。
東京から奈良までは結構距離がある。私は地図を読むことが苦手な大の方向音痴。一人で行って迷い、途方に暮れる未来が見える。
「恐らく、今から新幹線に乗って行ったとしても着くのは夕方だ。暗くなって危なくなる中を一人で行かせたくない」
始さんが私の頭を優しく撫でながらそう言った。
どうやら、心配なのは私の方向音痴のことじゃなかったみたいだが、それにしては少し過保護ではないだろうか。幾ら夕方になって暗くなりつつあるとは言え、今は夏だ。冬みたいに日の沈みが極端に早くなるわけではない。そんなに心配せずとも大丈夫な筈だが、如何せん。どうも最近、始さんの過保護さが上がっている気がする。子供扱いも大概にして頂きたいものである。
「仕方がない。恋も一緒に行ってくれ」
そんな事を考えていれば、始さんが短く溜め息を吐き、恋さんに渋々と言った形でそう告げた。
「え、いいんですか?! やったー!! 奈良だー!!」
「たーだーし、帰ってきたら課題の続きだ。いいな?」
「は、はい!」
課題をやらず、奈良に行けることを大いに喜ぶ恋さんへ。始さんが何時もの何倍も低い声で釘を刺したのであった。
月恋 第213話 「心許ない」→←月恋 第211話 「夏休みの課題はお早めに」
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snow(プロフ) - 櫻餅さん» すごくキャラの性格が出ていると思います。皆の良いところが出ているなと思います。忙しいと思いますが無理せずに頑張って下さい！ (2019年5月17日 17時) (携帯から) (
レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有難う御座います！夢主人公だけでなく、書かせて頂いているツキウタ。キャラも好きだと言って頂けてとても嬉しいです! (2019年5月17日 5時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんばんわ♪更新、ありがとうございます。やっぱり好きです。ヒロインの真っ直ぐな所も可愛いけど、他のキャラも好き。今回の話は新君らしいなって気がしました。是非、志望校に受かって欲しいなと思いました。 (2019年5月16日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - といろさん» コメント有難う御座います!また不定期ではありますが、更新頑張っていきたいと思っておりますので宜しくお願い致しますm(__)m (2019年5月15日 2時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
といろ - 再開待ってました！ありがとうございます…！これからもずっと応援しています。無理なさらぬよう、お願いします…！！ (2019年5月14日 13時) (レス) id: 8af1b1e6db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年11月5日 18時
