月に恋せよ暦ガール 【5】

月恋 第203話 「ユニークでユーモア溢れる」 ページ12

「私の父、詰まりはお前のおじいちゃんを覚えているか?」

「え、うん」

お父さんのお父さん、私の祖父に当たる人。まだ私が小さいときに亡くなってしまったが、堅物な父さんとは似ておらず、とてもユニークでユーモア溢れる楽しい人であったのを僅かに覚えている。

「どんな人だったかは覚えているか?」

「すっごく面白い人だった。真面目で気難しい父さんとは似てないなって」

「その私に似ていないと言うお前のおじいちゃんはな、昔は私と同じ仕事人間だったんだよ」

「は?!」

父さんの言葉に驚きと意外の声を上げる。

だって、自分の家にゆっくりお茶を飲む場所が欲しいからと茶室を作ったり、忍者屋敷に憧れてからくり部屋を１つ作っちゃったり、突然船旅がしたいとか言ってまだ元気だった頃のおばあちゃんと旅に出て、イースター島に行ったお土産だとか行ってトーテムポールの置物を持ち帰ってきた人だぞ?!

トーテムポールは北アメリカ大陸のものでしょ?! イースター島で有名なのはモアイだよ!!結局おじいちゃんは何処へ行ってたの?!とツッコミをいれたことをよく覚えている。

そんなおじいちゃんが、父さんのような仕事一筋の堅物人間だったとはとても思えないし想像がつかない。

「おじいちゃんはな、定年を迎えるまでは本当に仕事ばかりしていた人で、小さい頃の私は中々構って貰えなかった。だからこそ、お前には私みたいに寂しい思いをして欲しくないと、頑張ってお前と向き合おうと思ったんだが、自分のコミュニケーション能力に問題があった上、自分の父親に遊んで貰った記憶が乏しくて、中々上手くいかなくてな。そのジレンマで、私は沢山心の中で言い訳をしてお前から距離を置いてしまったんだ」

父さんの話に耳を傾け、ああ、そうだったのかと、漸く自分の中で納得が行った。

自分の父親と関わることが極端に少なかった父さんは、父親として私にどう接して良いのか分からなかっただけだったのか、と。

真面目で不器用な人だ。きっと、これが正しい、と言う１つの答えを手探りで探し続け、自分が納得するような父親として子供にどう接するべきかの答えが見付からず。その焦りや苛立ちを私にぶつけてしまいそうで、只々怖かっただけなのだ。

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