月恋 第191話 「怒気を含む」 ページ48
プロセラとグラビの共有ルームを繋ぐ螺旋階段。そこから段々と此方へ近付いてくる声は、今一番来て欲しくない人トップナンバーワンツースリー。
葉月さんと新さん。そして最後、私にとっては最早プロセラとグラビ、両グループのラスボス扱いである始さんだ。
「お、A、帰ってたのか」
プロセラの共有ルームに足を踏み入れ、最初に私の存在に気付いたのは相変わらずイチゴ牛乳を手放さない新さんであった。自分の顔をハンカチで隠しているため彼の姿は見えないが、ズゴー、ともう既に無くなりかけているイチゴ牛乳のパックをストローで啜る音が耳に届いて来た。
「どうしたんだよ、ハンカチで顔なんて隠して」
そして一番突いて欲しくない部分を指摘してくるのは矢張り葉月さん。
何故顔を隠しているのか。真実はいつも1つ。それは父に叩かれ腫れた頬と、泣きじゃくって赤くなってしまった目を見られたくないからですね。
「いや、あのですね、えっと………」
このまま黙っていては、余計に怪しまれるだけ。何か良い言い訳は無いだろうかと、顔を隠している適当な理由を脳内で模索し、それが中々見付からず口ごもれば。始さんが突然私の元へ素早く近付いてきて、意図も簡単に私の手からハンカチをするり、抜き取ってしまったのである。
「え、ちょ、は?」
いきなりのことで状況理解が追い付かず。只々、混乱するだけの私を差し置いて、始さんは私の顔を瞳に映した途端、一瞬にして表情を強張らせ、目付きを鋭くしたと思えば、私の湿布の貼られた頬にするり、大きく力強い手を這わせてきたのである。
「鼻声で、しかも頑なに顔を隠しているから可笑しいと思ったんだ。
この頬はどうした? 誰にやられた?」
始さんが勢いよく此方に詰め寄る。彼の表情は今まで見たことないほど、怒りを露にしている。流石は王様と言われるだけあって、怒るときの迫力が並みの人とは違う。目付きの鋭さに圧力があり、声は何時も年下に接する時の様な穏やかさは何処へやら。低く、地を這う様な声。それがより一層息苦しく感じてしまう。今まで出会った人の誰よりも、怒気を含んだ声が恐ろしい。そう思った。
月恋 第192話 「猫じゃらし」→←月恋 第190話 「それはフラグと言うものである」
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時