月恋 第178話 「ちょっと言えないかな」 ページ36
「あの、本当にご迷惑お掛けしてすみませんでした。それと探して下さって有難う御座いました」
どうやら他の皆さんも探してくれていたようだ。折角のお祭りに私はなんてことをしてしまったのだろうか。そう思い、項垂れていると誰かに頭をポンポンと軽く撫でられた。
恐る恐る顔を上げて見ると、其処にはちょっと不機嫌そうな葉月さんの顔。
「ばーか」
「は?! ばっ、ばかァッ?!」
顔を上げた瞬間、パチンッと音を鳴らして私の額に彼の長い指からデコピンを食らい、その直後にまさかの「馬鹿」発言を食らった。
迷子になったのは私だけれど、いきなり馬鹿は無いんじゃありません?と言う意を込めて、人に馬鹿と発言した葉月さんの端正な顔を睨み付ける。するとお次はあきれ半分に溜め息を吐かれ、何をそんなに呆れられたのか分からず最早泣きたくなった。
「あのな、そんな小さくて華奢な体でこの人混みの中を歩いたらそりゃ迷子にもなるわ!だからお前が迷子になったのは不可抗力であって、俺らはお前が大切な妹分だから勝手に必死になって探しただけ! お前がそんなに気にして俺らに頭下げる必要なんて何処にもないんだっつうの!あと、駆は何時までこいつに引っ付いてるんだよ!」
葉月さんは勢いよくそう捲し立て、いまだに私から離れようとしなかった駆兄を引き剥がしたのち、「無事で良かった」と頬をほんのり赤く染めながら私に聞こえるか聞こえないか、微妙な大きさの声でそう呟いたのである。
大切な妹分だから、その言葉が異様にむず痒くて仕方がない。
「何にやけてんだよ」
「いえ、別に」
葉月さんににやける顔をコツンっと軽く小突かれる。そして寮へ帰る途中、葉月さんが的屋の景品で貰ったゲーム機を目にして―――
「祭りで遊べなかった分、寮に帰ったらお前が的屋で取ったゲーム機でゲーム大会な」
そう言い出した。
「どうせならプロセラとグラビ対決しようぜ。勿論、Aは俺らグラビチームな?」
「何言ってんだよ新。どう考えてもプロセラチームだろ」
「私は隼兄をゲームでぼこぼこにしたいので、出来ればグラビチームでお願いします」
「おや、Aはもしかして何も言わずに浴衣を送ったこと、怒っているのかな?」
「怒ってはいませんが、凄くびっくりしたので今後は御遠慮願います。それと、私の服のサイズを何処で知ったんですか。あと、この浴衣はおいくらですか? 見たところ、かなり良いやつですよね?」
「ちょっと言えないかな」
「………」
月恋 第179話 「浴衣に込める」→←月恋 第177話 「黒き王様のレアショット」
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時