検索窓
今日:6 hit、昨日:2 hit、合計:85,411 hit

月恋 第176話 「夏祭りと七夕が繋ぐ」 ページ34

Procellarumの参謀であり、大らかで豪快、頼りがいのある皆の兄貴分である彼には初恋の人がいた。

10歳の夏。

祖母の家がある大阪へ遊びに行ったとき、たまたま訪れた病院で仲良くなった同い年の女の子。心臓に重い病気を抱えていたものの、とても明るい子だった様で直ぐ仲良くなり、そんな彼女に惹かれていつの間にか想いを寄せるようになっていたと、彼は語る。

祖母の家に滞在しているうちは毎日のように病院へ行き、彼女の元に通い詰め一緒に遊び、七夕の少し前の日にはこっそり病院から抜け出して夏祭りにも行き、そこで彼は的屋で取った髪飾りを彼女に似合うと思い渡したみたいで。

先程まで一緒に居た少女が海さんの初恋の子で、私にくれた髪飾りが、まさにそれであると言われて戸惑うしかない。

そんな大切な物を私が貰ってしまって良かったのだろうかと慌てると、海さんは持っていてくれ、と優しく笑いかけてきた。

その後は、彼女が間もなくして亡くなってしまったこと、幼くして儚い命を散らした彼女に自分が体験した沢山の楽しい出来事を遠い遠い未来で報告するため、アイドルとしてデビューするまでは何でも屋を経営していたとまで聞かされた。

何時も明るく元気で、プロセラの向日葵の様な海さんの奥底に秘められた、切なくも優しい想い出を聞き、私はうっすらと目に涙の膜を張った。

少女が私の前に現れて友達とはぐれてしまったと言ったのは、海さんに会いたかったからではないだろうか。一緒に海さんを探して欲しくて、思わずそう答えたのではないだろうか。

少女の海さんに、「貴重な想い出を大切にしてくれてありがとう」と本人に直接伝えたいと言う願いが、天の川を流れに流れて七夕の奇跡と言うものを起こしたのでは無いだろうか。私はそう考える。

だってあの時の少女は、海さんに会えてとても嬉しそうで寂しそうだったから。

会えて良かった。けれどもう会えないかもしれない、そう思うと悲しくなって目に溜まった涙が流れてくる。そんなときである。

「A、ありがとな」

突然、海さんにお礼を言われて目を見開く。だって、海さんと少女が会えたのは二人の強い絆のお陰で私は感謝されることを何一つしていない。そう伝えると、それは違うと首を横に振られた。

「お前が、俺とあの子の縁を繋いでくれたんだと俺は思う。お前があの子の言う友達を一緒になって探してくれていなかったら、俺達はきっと出会えなかったから」

月恋 第177話 「黒き王様のレアショット」→←月恋 第175話 「夏祭りと切ない記憶」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (73 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
154人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。