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月恋 第175話 「夏祭りと切ない記憶」 ページ33

「き、消えたんですけど?!」

私は今さっき目の前で起きた非現実的な出来事に同様と驚きを隠せずして思わず叫んだ。

もしかして、否、もしかしなくともあの可愛らしい少女は幽霊で。この怪奇現象を引き起こしていたのはあの少女。

彼女が消えてから、漸く神社の参道の方でがやがやと人の声が聞こえてくるようになったのだ。

「あー、取り敢えずA、そこの石段に座って落ち着きがてら話をしようか」

混乱に混乱を極め、あわあわと慌てる私を見兼ね、放心状態から帰還した海さんは先程まで少女と座っていた石段に再び座るよう促した。

彼の言う通り、すとんっと石段に座って一息吐く。そして私の隣に海さんが腰を降ろし、口を開いた。

「悪かったな、はぐれたうえ、すぐに見付けてやれなくて」

「いえ、私もはぐれてしまってすみませんでした」

海さんは申し訳なさそうに眉を八の字に下げる私の頭を、わしゃわしゃと大きな手で撫でる。

「駆と手分けして探しても見付からなくて、丁度合流した隼に相談したところ神隠しじゃないか、なんて言い出すから焦ったのなんの」

隼がそう言うこと言い出すと冗談に聞こえないからな、と豪快に笑う海さん。そんな彼の額にうっすら汗が滲んでいて、私を一生懸命探してくれていたことが伺える。

「見付かって本当に良かったよ。それにまさか、あの子に会えるとは思ってなかった」

ふと、海さんはあの的屋で見せた何処か懐かしむようで寂しそうな笑みを浮かべた。

彼が言うあの子は、さっきの少女のことだ。もしかしたら、的屋で見せたあの寂しそうな表情の訳も関係しているのかもしれない。

しかし、それを私がただ気になるからと言って、更に掘り下げて聞いても良いものなのか迷うところだ。

聞くか否か、どうしようかと思っていると海さんはそんな私を見兼ねてふっ、と優しく笑みを溢す。

「そんなに気を遣わなくても良いぞ?気になるなら素直に聞いてくれ。まあ、聞かれなくても今から俺が話しちまうけどな!」

そう言って海さんは石段に座ったまま、ぽつりぽつりと遠い想い出を懐かしむように、大切な大切な宝物を扱うようにして語り出したのである。

――――夏の淡く、切ない初恋の記憶を

月恋 第176話 「夏祭りと七夕が繋ぐ」→←月恋 第174話 「鈴の音が鳴り響く」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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