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月恋 第174話 「鈴の音が鳴り響く」 ページ32

「海さん?!」

今まで誰も見当たらなかったこの絶望的状況下に置いて、彼の声は最早希望に満ち溢れた一筋の光り。

「海さーん!」

段々と近付いてくる彼の声と足音に応えるよう私は石段から立ち上がり、声を張り上げた。

バタバタと騒がしく足音を立てて、此方に駆け寄ってきた海さんが突然、ピタリと足を止め、まるで金縛りにでもあったかの様に硬直してしまった。

「え、海さん?!」

漸く暗がりにも目が慣れて、はっきりと分かる海さんの姿を目に映す。

彼は私の隣に居る少女を見詰め、大きく目を見開かせたのである。

「君は………」

この子のことを知っているのであろうか。知っているのであれば、彼女の友達を一緒に探して貰おうと口を開こうとしたとき。

りんご飴を食べ終えたその少女が立ち上がり、ちょいちょいと紅葉の様な手で手招きをし、しゃがんで欲しいと頼んできた。

私は少女の手招きに応え、彼女の目線まで膝を折る。すると少女はするりと自分の髪から赤い椿の髪飾りを抜き取り、私の髪に付けてくれたのだ。その行動に私は驚いた。

「こ、これあなたのじゃっ」

少女は友達を探している間も時々、ちょんちょんと手で触り、髪飾りがあることを確認していたのである。それだけ大切なものではないのかと、慌てて彼女に返そうとしたが彼女は小さく首を横に振り、小さく微笑んだ。

「一緒に友達を探してくれて、私を気遣っておんぶまでしてくれたし、あなたのりんご飴までくれた。そのお礼。とても嬉しかったよ、ありがとう」

そしてまたふわりと柔らかく微笑み、鈴の音が鳴ったかのような可愛らしい声で―――

「彼をよろしくね」

そう告げ、いまだに唖然としている海さんの元へちょこちょこと駆け寄る。

海さんに「また会えて良かった。想い出を大切にしてくれてありがとう」と伝え、次に優しく少女らしからぬ慈愛に満ちた笑顔を浮かべたかと思うと、淡い光に包まれ消えてしまったのである。

月恋 第175話 「夏祭りと切ない記憶」→←月恋 第173話 「淡い想い出」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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