月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第167話 「肩の力を抜いて」 ページ25

「ぼさっとしてないでさっさと行くぞー」

「え、ちょっと!」

悶々として、断って別々に行くべきか、欲望に忠実に従い一緒に行くべきかを迷っている途中で、私のマイナスな思考を遮るかのように新さんが私の背中をグイグイ押してきた。

「何悩んでんのかは知らねーけど、お前は考え過ぎ。何時もの、何事にも体当たりなAはどうしたよ。変に距離置かれると俺らも流石に傷つくってぇの!」

そして新さんに押されるがままエントランスから外に出ると同時に、少しむっと口を尖らせ、拗ねた様子の葉月さんに頭をペシンッ、音を立てて軽く叩かれたのである。

叩かれた部分を右手でそっと触れて考える。

最初の方は気にしていなかったが、段々メディアの露出が増えて仕事にも私生活にも注目される様になったからか、私は普段の言動に対して少しばかりか神経質になっていた様だ。

そのせいか、前よりももっと皆さんと距離を置こうとしていた自分がいる。例えそれが自分を守る行為だったにせよ、それを寂しく思う人が私には居てくれるわけで。

もう少し自分の言動に気を付ければ良いだけであって、これ以上皆さんと距離を置いてはいけない気がした。そしたらきっと、大きな大きな心の溝が出来て、元には戻れなくなってしまう悪い予感がしたから。

私は葉月さんの言葉に対し、素直にごめんなさいと謝った。

もっと気楽に、私は私なりの距離感で。もしそれが近過ぎて注意されたり、私が、これは本当に普通のファンの一人としてでも嫌かもしれないと思ったら気を付ければ良い。

だから、変に気を遣ったり、肩に力を入れたりせずに、隼兄の言った通り皆さんと一緒に過ごせることを楽しめば良いのだ。

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