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月恋 第160話 「雨の日の思い出」 ページ18

「ごめんね、傘にいれてもらっちゃって」

何時もは夕日が眩しいくらい明るく澄んだ空をどんよりとした雨雲が覆い隠し、先程までじりじりと照りつけていた太陽によって焼かれたコンクリート地面を冷ますように冷たい雨が降り注ぐ中、私は結乃さんと1つの傘に身を寄せながら寮への帰路を歩いていた。

「いえ、私も丁度帰るところでしたから」

撮影前はとても良い天気だった。だから結乃さんは自分が雨女だと言うことをすっかり忘れ、傘も忘れてしまったらしい。

今日は涙兄とヤマトと遊ぶために、お仕事が終わった後はツキノ寮に行く予定でそれを凄く楽しみにしていたとか。

「何か楽しみなことがあると必ず雨が降るんだよね」

止むことを知らない雨を眺め、苦笑を浮かべ肩を落とす結乃さん。

そんな結乃さんにちょっと同情する。でもごめんなさい、私は今降っている雨に超絶感謝しています。

雨が降ってくれたお陰で、あのSeleasの結乃さんと相合い傘なるものが出来たからである。

辛うじて平静を装ってはいるが、内心興奮状態。

傘が小さいせいで歩く度に軽くぶつかる右肩。そこから徐々に伝わってくる彼女の体温で私は全身が沸騰しそうである。

しかも至近距離から結乃さんの甘い匂いが香ってくるものだから、気が気でない。

私は変態か! 思春期真っ只中の男子高校生か! ちょっと落ち着け、はしたないぞ!

興奮気味の心中を抑えるため、心の中で一人、静かにツッコミを入れる。

「私はやっぱり雨女だなぁ………」

平常心を保つのに必死な私の横で、そうぱっちりと大きな目を悲しそうに伏せて呟く結乃さん。

何時もテレビでは元気一杯な明るい姿を見せてくれる彼女が、私の隣で落ち込んでいる。まだ東京に飛び出してくる前、一人で家に居るのが心細いと縮こまっている私は、何度テレビの中に映る彼女の笑顔に心を明るくして貰ったことか。

それを考えると居てもたっても居られなくなって、思わず傘を片手に、進む足を止めて彼女本人の魅力を力説してしまったのである。

月恋 第161話 「梅雨の日の思い出」→←月恋 第159話 「幸せの過剰摂取にご注意下さい」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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