月恋 第138話 「鉄は打たれて強くなる」 ページ44
「何で俺がアイツに喧嘩を吹っ掛けたのか分からないって顔してるな」
「え?!」
朏さんに今考えていることを読み取られ少し否、かなり動揺する。
俺ってそんなに顔に出やすいのかな?
「あの、少しいや、かなり気になってます」
でも気になるのは事実だし、此処で聞かなかったら後々気になって眠れそうにない。そう思って、彼に正直な気持ちを伝えた。
すると、朏さんは楽しそうに笑みを浮かべて――
「鉄ってのは、打たれて強くなるもんだろ?」
「はい?」
そう答えるが、俺には何が言いたいのか分からず首を傾げる。
「世の中には、叩かれるほど強くなって実力を伸ばす人間と、褒められて、これからまた褒められるためにもっと強くなろうと伸びるタイプの人間がいる」
ああ、確かに、と俺は少しだけ納得する。
「アイツ、暦屋は厳しくされればされるほど強くなるタイプの人間だ」
「え、じゃあ今回、Aちゃんに喧嘩を売ったのって―――」
話が進んでいくごとに、段々と朏さんの意図が見えてきた。
「ああ、気が強くて負けず嫌いそうなアイツの性格を利用した」
だから最初に「鉄」の話を持ち出したのか。
Aちゃんは確かに今回の一件があってこそ目に見えるほどの成長を遂げ、大きく才能を発揮した。
どうやら彼は、最初からAちゃんの演技の才能を見抜いていた様だ。でなければ、こんな意地悪い行動に出ない。
俺はてっきり、朏さんがAちゃんを気に入らないと思っているのかと勘違いしていた。だから、彼の目的がはっきりして全身の力が抜け出し気がした。
嫌いあってる者同士がラブシーンを演じるのかと思ってヒヤヒヤしたのである。
「俺はてっきり、Aちゃんのことを嫌ってるのかと思ってました」
「アイツを‘アカリ’役に推薦したのは俺だし、負けず嫌いで向上心のあるやつは嫌いじゃねェよ。寧ろ、アイツは気に入ってる方だ。これからアイツがこの業界で活躍してくれること、楽しみにしてんだよ」
なんて言って笑顔を見せる朏さんは、誰よりも優しくて格好良くて輝いて見えた。
「それ、出来れば本人に伝えて上げてください………」
「それは断る」
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間!!!さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間!!! - 続編おめでとうございます!これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね!!!更新頑張ってください!応援してます! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年3月13日 2時