月恋 第137話 「才能開花」 ページ43
先生に「嫌いだ」と突き放され、泣きそうになるのを我慢して無理矢理作った笑顔を浮かべ、「アカリ」はその場を後にした。
彼女が出ていった後、先生は下を向き、弱々しい声で「ごめん」と彼女に対する謝罪を呟く。
そして「アカリ」は理科室を出て、パタンッと静かに扉を閉めたのを合図に、必死に堪えていた涙を流して泣き出した。
好きな人の前では絶対に涙を見せない。
気が強くて頑固だけれど根の優しい「アカリ」らしい姿である。
右手を口元に当て、声を殺しながら泣き続ける「アカリ」に俺は手を差し伸べたくなった。その時点で、もう俺はAちゃんの演技に引き込まれている。
他のスタッフさん達も、役者さん達も、あの監督さんまでもが彼女の演技に見惚れていた。中には、「アカリ」に貰い泣きする人も出てきていたのである。
「アカリ」が理科室の前を泣きながら走り去っていくところで撮影は終了。
監督からのOKが出た。Aちゃんはそれを聞き、先程までしおらしく泣いていたのが嘘のような可愛らしい笑顔を浮かべたのである。
そのギャップと切り替えの早さに俺も周囲の人達も驚きを隠せないでいた。気付いていないのは本人だけ。
それを見て俺は、彼女、Aちゃんの芝居に関する高い実力は本物だと実感した。多分、これからもっと、その才能をこの業界で発揮していくことになるだろう。
そんな予感がする。
「やっぱり良い演技するな、アイツ」
「え、ええっ?! み、朏さん?!」
俺の隣にいつの間にかやって来ていた朏さんが、満足げに笑って見せた。
「さっきは悪かったな、俺とアイツの問題に巻き込んで」
「え、あ、俺は全然大丈夫です! それよりもAちゃんにはちゃんと謝って上げてくださいね? やっぱり、人に煙草の煙を掛けるのは良くないことですし」
「ああ、ちゃんと謝ってくる」
朏さんが意外とすんなり頷くものだから、何だか拍子抜け。
何故自分が謝らなければいけないか、余計なお世話だと此方が怒られるのではないだろうかと身構えたが、それは余計な心配だったみたいだ。
あの時、その場に居ただけの俺にも謝ってくれて気遣ってもくれるし、Aちゃんにも謝りに行くと言っている朏さん。
実は良い人なのでは?そんな疑問が俺の頭の中に浮かぶ。こんなに良い人なのに、何でAちゃんを怒らせるようなことをしたのだろうか。
考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間!!!さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間!!! - 続編おめでとうございます!これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね!!!更新頑張ってください!応援してます! (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年3月13日 2時