月恋 第110話 「負けず劣らず」 ページ16
始さんの優しくて可愛い一面が垣間見れたアイアンクロー塾が終わり、オーディションに向けて芝居の練習をしようとテーブルのうえに散らかしていた勉強道具をそそくさと片付け、始さんにお礼を伝えてから自室に戻った。
「んー、ここの表現がなんか上手くいかない」
自室に置かれた一人で座るにはかなり広いソファに座りながら、右手にシャープペン、左手に台本を持ちながら芝居について頭を悩ませる。
芝居と言っても、ドラマの中のワンシーンを切り取ったものでかなり短い。
ヒロインが長年片想いしていた幼なじみの男の子に告白してフラれるシーンを私はオーディションで披露しなければならないのである。
だがしかし、生まれてこの方14年、幼い頃に儚くではないが散ってしまった淡い初恋以来、私は男の子を恋愛的な意味で好きになったことがない。
ヒロインになりきろうとしても、人を好きになると言うことがどういうことかを理解出来ていない私には、彼女の心に秘めた感情をどうやって表現して良いか分からないのである。
例えば、ヒロインの最後の台詞に「話を聞いてくれてありがとう。此れからも良かったら友達でいてください」というものがある。
此れは泣きながら言った方が良いのか、泣かない方が良いのか大変迷うところだ。
登場人物の欄に、ヒロインは芯が強く頑張り屋だと紹介されている。頑張り屋は兎も角、芯の強い女の子が、フラれたとは言えど好きな男の子の前で泣き顔を見せるだろうか。
泣き顔を見せることでフッた相手に罪悪感を与えてしまう可能性を彼女は考えることが出来るはず。だから敢えて泣くことはせず、笑顔で「此れからも友達でいてください」と伝えたのではないだろうか。
果たして彼女はどっちだろう、と首を傾げて考えがどんどん迷走していく。
もし私だったらどうするのかを台本片手に想像してみるが、そもそも脈の無さそうな相手にわざわざ告白しないな。なんて可愛いげの無い答えが出てくるもんだから、全く参考になら無い。
どうしたもんかと思っていると、コンコンッと扉からノック音が聞こえてきて―――
「A、入るぞー」
私が返事をする間もなく、ひょっこりと新さんが入ってきた。
「いや、ノックしたんなら私が良いって言うまで普通入んないもんですよ?!」
新さんは隼兄に負けず劣らずマイペースな人である。
月恋 第111話 「オープンスケベ、ご注意下さい」→←月恋 第109話 「顔が赤い」
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櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですが頑張ります。これからもこのお話を宜しくお願いします。 (2018年3月21日 12時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
2次元大好き人間！！！ - 続編おめでとうございます！これからの夢主ちゃんの成長が楽しみですね！！！更新頑張ってください！応援してます！ (2018年3月21日 11時) (レス) id: 6896f5a2c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2018年3月13日 2時
