月恋 第56話 「スペシャルヒント」 ページ9
「始は優しいねェ。ね、A」
「………そうですね」
隼兄の何もかも見透かしてしまう様な不思議な雰囲気を醸し出す瞳に捉えられ、少しだけ動揺する。
先刻まで、推しの睦月さんが格好いいと、まるで子供の様にはしゃいでいた筈の彼が一瞬にして大人に戻った瞬間、言い表し様の無い緊張感が全身に走る。
今日の睦月さんとのやり取り。彼にはバレてしまっている気がして仕方がないのだ。
正論を言われて、何も言い返せなくて、どうすれば良いのか分からなくて、只々悔しくて、睦月さんに自分の怒りをぶつけてしまった。
大人気無い八つ当たり。
「優しいからこそ、僕らの可愛い末っ子に成長して欲しいからこそ、時には厳しい言葉を掛ける。皆の代表として、リーダーとして………ね?」
分かってる。分かってますよ'隼さん'。
睦月さんが私の為を思って、誰もが言い難い事を伝えてくれたこと。
私はそんな優しい彼に、自分自身への怒りをぶつけてしまったことが悔しくて堪らないのだ。
「君は賢い子だからね、それくらい理解しているだろうけど一応伝えておくよ。始も僕も、勿論グラビやプロセラの皆、それに大や奏は広い世界に羽ばたこうとしている小さな小鳥に期待して応援していること。だから、時には君を想って厳しい言葉を掛けること。それだけは忘れないで欲しいなァ。」
彼の口から紡がれる一つ一つの言葉達が私の心の中に自然と浸透していき、涙が溢れる。
'よく考えもせず、思い立ったら直ぐ行動に移してしまう'ノリと勢いだけで此所まで来てしまった私に誰か一人でも期待してくれていると言う事実が嬉しくて、そして何の信念も無い自分の情けなさがあまりにも悲しくて。
二つの感情が複雑に入り交じり、私の脳内が混乱している。だからだろうか、隼兄の言葉がやけに心の中から離れず、私の涙腺を崩壊させているのは………
両目から一粒、また一粒としょっぱい雫が流れ出して止まらない。
「それと中々答えの見付からない、迷える子羊ちゃんに魔王様からスペシャルヒント」
私の目から決壊したダムみたいに溢れて流れ続ける涙を、長くて白い、綺麗な右手の人差し指で優しく拭い取る隼兄は―――
「君の美点は、考えたらすぐ行動に移せる強い好奇心と行動力だよ」
そう言って、また意味深な笑みを浮かべた。
月恋 第57話 「凡人と天才」→←月恋 第55話 「うらやまけしからん。」
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櫻餅(プロフ) - リュウヤさん» こんにちは。コメントありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです。これからもこの夢小説をぜひ宜しくお願いします。 (2018年3月27日 23時) (
レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
リュウヤ(プロフ) - こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。ヒロインちゃんと始さんのやりとりに、涙ぐんでしまいました。みんなが温かくて、素敵な作品をありがとうございます。続編も引き続き、追いかけさせていただきます！ (2018年3月26日 8時) (レス) id: 707d2de435 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» こんばんは。コメントありがとうございますm(__)mそう言って頂けて大変嬉しく思います。不定期更新ですが頑張ります！ (2018年2月9日 21時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんばんわ。ヒロインちゃん、憧れの愛ちゃんに会えて良かったですね。いつも一生懸命な彼女に元気を貰ってます。これからも頑張って下さい！ (2018年2月9日 18時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 2次元大好き人間！！！さん» コメント有難う御座いますm(_ _)mこれからも不定期更新ですが、頑張っていきたいと思います。 (2018年1月10日 4時) (レス) id: d35033e969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2017年12月26日 23時
