月に恋せよ暦ガール 【2】

月恋 第49話　「浄化されそう」 ページ2

「合同ライブの宣伝ですか?」

　軽い火傷をして翌日、そして睦月さんにちょっとした嘘をついて翌日のこと。

私に黒月さんから、今度プロセラとグラビの合同ライブが開催されることを告げられた。

そのライブの見所を宣伝し、ファンの人達に広めていく、実にツキウタ。宣伝アイドルらしいお仕事が入ってきたのだ。

　宣伝の仕方は至って簡単。

　2週間に1回放送されるコヨミラジオで、ゲストと共に合同ライブ開催をお知らせし、ゲストの皆さんにその魅力や、特に見て欲しいポイントを紹介してもらう。

そして次に、テレビのCMやラジオの宣伝で私がライブの日程を伝えていくのである。

　今日はコヨミラジオの日。ゲストはなんと、グラビの黒の王様と名高い睦月さん。

私が此の寮に来て、もう1ヶ月ちょっと経っているものの睦月さんとは、昨日のこと以外でまともに話した事がない。

それは何故か―――睦月さんが大学の講義や仕事で忙しく、寮の中で全く顔を合わせないうえに、彼の王様の名に恥じない堂々とした雰囲気を前にした私が怖じ気づき、寮で顔を会わせたとしても挨拶だけで済ましてしまうからである。

　雰囲気に怖じ気づいていたのは昨日もで、一言、二言交わすだけでも緊張したのだ。それだと言うのに嘘を吐いた翌日である。

緊張は何時もの10倍。昨日以上に冷や汗が止まらない。

「よ、よろしくお願いします」

「嗚呼、よろしく」

　向かい合わせに座り、スタジオで待機している睦月さんに挙動不審ながらも深々と頭を下げる。下げ過ぎて、頭を勢いよく目の前の机にぶつけ、睦月さんに「大丈夫か?」と心配された。

「だ、大丈夫です」

否、大丈夫じゃないですね、主に心が。

「そう緊張するな」

否、それも無理な話ですよ睦月さん。Six Gravityが誇る王様である貴方を前にして、緊張するなと言われましても無理です。不可能です。

今も彼から無自覚に放たれるキラキラオーラによって、嘘つきな私は浄化されそうである。

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