永遠の二番手によるヒロインポジション略奪計画

それは奇跡であり運命 ページ34

彼女がアイドルを引退するという事実を知った当時の俺はショックのあまり一週間は寝込んだほどだった。

友人の宗司に部屋から引っ張り出してもらわなければ、一生あのまま引きこもり続けていた自信があるほど。それくらいショックだったのだ。

今頃、彼女は何をしているのだろうか。

彼女がアイドルを引退して早2年が経った今もまだ、かぐやちゃんのことを諦めきれていない俺だったのだが……

「えっ……」

大学も芸能人としての仕事も休みであったある日のこと。

寮のテレビを適当につけてぼーっと眺めていたのだが、画面の端っこにかぐやちゃんが一瞬だけ映った気がして俺はお茶を飲もうとしていた手が止まった。

「どうしたの？」

突然、動きを止めた俺に隣に座っていたモリが不思議そうな顔をして尋ねてきたのだがそれどころではない。

「いま、いま……テレビにかぐやちゃんがいたような」
「かぐやちゃんって空が大好きだったアイドルの……」
「そう！そのかぐやちゃん！って、ほんとにかぐやちゃんだー！」

再び、かぐやちゃんらしき女の子がテレビに映った瞬間、俺は確信した。

彼女は紛れもなくあのリトプリのかぐやちゃんであることを。

「か、かぐやちゃんー！」

もう一度、ひさしぶりである彼女の姿を見たくてテレビ画面にべたりと張り付く。

「あれ？この子って最近、ツキプロからデビューした日暮Aちゃんじゃないかな？」

モリの一言に俺は更に大歓喜。

苗字は違うけれど、Aというのは確実に彼女の本名だ。しかも、同じ事務所所属だと？！

それは奇跡だとも、運命だとも思った。

大好きなかぐやちゃんがまたアイドルとして戻ってきてくれたことも。俺と同じ事務所に所属していることも。

本当に、本当に、俺は嬉しかったのである。

マイナス思考のスパイラル→←熱狂的なファン

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す