秘密を打ち明けるほどの勇気は、私にはまだない。 ページ32
「Aって凄いよな!」
「は?」
とある休日。
仕事も学校もバイトもない完全オフの日。
たまたま壱流くんとも壱星くんとも休みが被ったため、3人で遊びに出掛けることになった。
まだ上京したてである2人に、私が東京の街を案内することになったのだ。
色んなところを回って、遊んで、食べて、歩いて。そしてちょっと疲れたからと、一休みするためにおしゃれなカフェでお茶をしていたときだった。
突然、壱流くんがそんなことを言い出したのである。それに同調するように、こくりこくりと頷く壱星くん。
いきなりのことで戸惑うばかりの私に2人は言った。
「俺たちとデビューした時期もそんなに変わらないのに色んなこと知っててさ」
「それを俺たちにも教えてくれるから凄く優しいなって、壱流と言ってたんだ」
2人から向けられる純粋な尊敬の眼差しと、素直な褒め言葉。嬉しいはずなのに、私は素直に喜べなくて。2人から思わずそっと目をそらした。
「別に、凄くないよ」
だって私は一度デビューして、失敗している人間なのだ。
一度は夢見た大きなステージ。だけど、全然売れなくて。夢を叶えることが出来ず、挫折した情けない人間である。2人から尊敬されることなんて、何一つない。
まだ一口も飲んでいないカフェラテに視線を落として、私はぼそりと呟く。
「逆に、私は2人の方が凄いと思うよ」
自分達の生まれ育った場所からずっと離れたところまで来て、アイドルデビューを果たして。それでもめげずに活動しているのだから。
そんな凄い2人は私が元は売れないアイドルだったことを、そして女優である朝倉乙葉の妹であることを知ったらどんな目で私を見るようになるのだろうか。
初めて出来た、一緒にいて心の底から楽しいと思える友人に秘密を打ち明けるのが少しだけ怖くなった午後14時過ぎ。
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snow(プロフ) - 勉強など大変だと思いますが、頑張って下さい!長々とすみません。それでは、またの更新楽しみにしてます♪ (2023年3月27日 13時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 乙葉さんが、優しいのか判らないけど、配慮が欠けて見える気がします。私は、空君みたいにヒロインちゃんを応援してくれる人は、実は結構いると思います。だから、やりたいことをやったもん勝ちだと言う、勇気100%の言葉を贈ります。 (2023年3月27日 13時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんにちわ♪久々の更新、待ってました!ヒロインちゃんは、大器晩成の努力家なんだと思います。少しずつ、成果が出ればと思います。努力は決して、無駄にはならないと思います。今は、冬の様に辛くても、いつかは春の様に花開くと信じてます。 (2023年3月27日 13時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - しゅるさん» こんにちは。ご指摘ありがとうございます。 (2021年12月17日 9時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - こんにちは。あ、あの、『結局、折れた結果がこれである』に出てきた黒月さんは、Procellarumのマネージャーですよ…今さらですみません!細かいですけど、ツキウタ。ファンなので…とても面白い話で楽しく読んでます!無理のない更新を頑張ってください! (2021年12月12日 10時) (レス) @page5 id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2021年11月30日 10時