永遠の二番手によるヒロインポジション略奪計画

結局、折れた結果がこれである。 ページ4

女の堪は当てにならない。はっきりわかんだね。

女の堪うんぬんはさておいて、この度は多大なるご迷惑をお掛けしてしまい大変申し訳ございませんでした。何かお詫びをさせてください……と頭をひたすら下げながら申し上げたところ、月野社長は待ってましたと言わんばかりに瞳をキラキラと輝かせ、私を真っ直ぐ指差して告げたのである。

YOU、僕の事務所でアイドルデビューしちゃってくれYO！(超意訳)と。

いきなりのことで戸惑い、運転手さん……ではなくあのツキノ芸能プロダクションを代表するアイドルグループのひとつ「Procellarum」のマネージャーであるという黒月 大さんに助けを求めるようにしてちらりと視線を向ければ、物凄い苦笑いを浮かべて簡単に事情を説明してくれた。

簡単に説明してしまうと、つい先日行われたにツキノ芸能プロダクション略してツキプロの女性アイドル新人発掘オーディションにて。

1万人以上が応募する大きなオーディションだったものの、社長のお眼鏡にかなう子がおらず合格者はなんと異例の0人。

合格者には事務所の宣伝、つまりは広報活動を中心に働く看板であるツキプロPRアイドルとして活躍してもらう予定だったのに、社長のせいで企画が丸潰れ。

もう、こうなったら社長直々に街を出歩いて気に入る子を見つけてもらうしかないと、黒月さんが運転する車で都内の至るところを回っていたらしい。

なんともぶっ飛んだ最終手段である。

つまりあれだよね？車内から、気になる女の子を見つけようとしてたんでしょ？それって完全に不審者じゃん。

私が不審者と間違えて、防犯ブザー鳴り響かせたの悪くなくない？等と考えた結果、私は彼からのスカウトを「だが断る」とにっこり笑顔で拒否。 そこからが凄かった。

スカウトをにっこり笑顔で断り、そそくさと帰ろうとした私の腰に月野社長は逃がさないとばかりにしがみついて騒ぎ倒したのである。

「なんで？！」
「アイドルなんて出来ません！」
「大丈夫！絶対才能あるって！」
「ない。そんなものないから離して！」
「嫌だ嫌だ！だって離したら君、帰っちゃうじゃん！」
「当たり前ですけど？！」
「なんで嫌なの？！絶対なれるから！僕が保証するから！ね？おーねーがーいー！」
「うるさいしつこいうざったい！」
「さっきお詫びするって言ったじゃん！」

と、まあこんな感じでお互い立場関係なくアイドルになるならないの押し問答を繰り返した結果――――私が折れて今に至るのであった。

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