永遠の二番手によるヒロインポジション略奪計画

昔の芸名 ページ24

睦月さんとのコラボ撮影の効果は抜群であった。

睦月さんが猫たちと戯れる姿が、彼のファンのハートを見事につかんだらしい。ここ数日で一気に視聴数とチャンネル登録者数が増えて。そしてまた数日後、一気に減った。理由は単純。

チャンネル登録してくれた人のほとんどが、また睦月さんが登場してくれるのではないか、睦月さんが出演したのならば、他のメンバーも出るのではないかと期待していたグラビ、プロセラファンばかりだったからである。

分かっていたさ。私を見てくれる人なんていないことくらい。と、ひとり落ち込みながらも、次の動画のネタを相談しに事務所へと訪れていた。

徹夜で作り込んだ企画案の入った鞄を肩にかけて、とぼとぼ会議室へと続く事務所内の廊下を歩いていれば、

「もしかして……かぐやちゃん？」

懐かしい、もう二度と呼ばれることはないと思っていた昔の芸名で呼び止められた。

「手塚さん？！」

声のした方へと振り向けば、そこには元大手アイドルグループに所属していた頃からずっと私を可愛がってくれていたプロデューサーさんの姿があった。

「ひさしぶりね。また会えて嬉しいわ！」

柔らかい笑顔を浮かべる手塚さんは数年前とほとんど変わらず。もう五十代になるというのに、ずっと綺麗なままである。まさに美魔女だ。

「あなた、連絡はくれるのになかなか会ってくれないんだもの……寂しかったわ」
「ごめんなさい、ちょっと忙しくて」

久しぶりに再会した嬉しさに、女子二人ではしゃぎだす。

「あ、そうそう！私ね、かぐやちゃんがまたアイドルやるって聞いて、お仕事持ってきたのよ！」
「わあっ、ありがとうございます！」

キャッキャと話してくれる手塚さんに私は心のなかでガッツポーズ。

いつ、どんなときに頼ることになるか分からないからと、元大手アイドルグループ時代にお世話になった人の名前と顔はすべて覚えている。そして今でも細々と連絡を取り合っていたのが今回は功を成したようだ。

「若い世代の流行を紹介していく番組なんだけどね、ちょうど出演してくれそうな若いモデルやアイドルの子を探してたのよ」

で、若くて仕事があまり無さそうな私がちょうど良いと考えたのだろう。

まあ、暇だしテレビ出演のチャンスをゲット出来たので文句はない。

「引き受けてくれるかしら？」

彼女の問いかけに、私はにっこりと笑い返す。

「もちろんです」

だって、断る理由なんてどこにもないもの

器用な生き方と不器用な生き方の違い。→←これはお仕事だから大丈夫、と思っていた私が間違っていた。

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