永遠の二番手によるヒロインポジション略奪計画

すっかり女の子らしくなった妹の手を握ったときの兄貴の心情について述べよ ページ12

来週から寮生活を始めるAの引っ越しの準備を、夕方までになんとか終わらせることが言えたのは本当に奇跡だった。

朝日奈家五男のつば兄ほどではないが、片付けが苦手なAの部屋はほどほどに散らかっており、荷物をまとめるのにも一苦労。

使い古された大量の参考書と問題集に漫画と小説、Aの大好きなアイドルグループのCDやグッズ、クローゼットの中にぎっちり詰まった洋服等々。

必要なものすべてを段ボールに詰め終わった頃には、もう立ち上がる気力もなく。俺たちは段ボールだらけの部屋の床に、大の字になって寝転がっていた。

「つーかーれーたー！」
「俺も……てか、オメェの部屋が散らかりすぎなんだよ！ 寮生活では気ぃ付けろよ？」
「わかってまーす」

床に寝転がったまま、疲れたと何度も騒ぐAの頭を乱雑に撫でてから起き上がり、壁にかけられたイルカの形の可愛らしい時計を見る。

そろそろ夕飯の時間だ。

早く行かないときょう兄に怒られるぞ、とだんご虫のように床の上で丸まり始めたAを無理やり起き上がらせる。

「ねたい」
「俺だって寝てぇよ！」

軽く力をいれただけでも折れちまいそうなAの細っこい腕を引っ張り、夕飯の準備をしているであろうきょう兄の元へと急ぐ。

白くて細い、女子らしい手。元々冷え性だからか、少しだけひんやりした手を温めるようにぎゅっと握りながらふと、考えた。

こうして、コイツの手を引っ張って走るのは何度目だろうか、と。

はじまりは、おふくろの遠い親戚だというコイツらの実の母親がうちへ訪れたとき。天才肌で何でも出来る乙葉ばかりがどうしても目立ち、その影に隠れてしまいがちなAを見つけた7年前のあの日からだ。

Answer→←頼れる我らがお兄ちゃん！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す