化けの皮が剥がれる ページ30
俺の年下の先輩に、頭のネジが数本抜けたちょっとおかしな子がいる。
「固い……!」
「そりゃ、あずきバーだからね」
コンビニで昼ご飯を買った帰り、コンクリート地面にゆらゆらと影を作りながら俺のとなりでアイスをかじる先輩――――三ヶ井 Aさん。
一応先輩ではあるが、俺は親しみを込めてミケさんと呼んでいる。
最初に出会ったときは、まるで二次元から飛び出してきたかのようなとんでもねぇ清楚系美少女がいる!と感動していたのだが、だんだん親しくなるにつれて彼女の化けの皮が剥がれていったのである。
どうやら彼女は普段、大きな猫を被っているだけで本来の性格はただの変人だったらしい。
プライベートの面まで見せてくれるほどではないにしろ、まあまあ仲良くなった俺だけに見せてくれる一面は多く。
俺の憧れの明るくも上品な深窓のご令嬢はどこへやら。気づいたときにはもうすっかり、彼女は掴みどころがないうえに扱いにくい変な先輩と化していた。
まあ、多少扱いにくいだけで一緒にいて楽しいし、可愛いし、変に気を遣わなくても良いから話しやすいうえに、意外と相談事には的確なアドバイスをくれる頼れる先輩でもあるのだがいかんせん。なにかと変な部分が目立つのである。しかも、本人が大学のレポートや仕事に追われて疲れていると余計にヤバさが際立つのだ。
今日だっていきなりアイスをねだってくるし、ちゃんと昼飯を食べろと忠告しても食べないし、帰る途中で蟻の行列を見つけてじっと観察し出すしでおかしいのなんの。
「え、ミケさんってちゃんと寝てる?」
あまりの奇行っぷりに心配になり、最近、ちゃんと寝ているか否かを尋ねてみたところ返ってきた答えに思わず頭を抱えてしまった。
「ちゃんと寝てるよ、1時間くらい」
「寝たうちに入らんし、それは睡眠じゃなくて仮眠じゃボケ!」
これはヤバい。のんびりアイス食いながら、蟻の行列を観察している場合ではない。
今すぐ、この人を休憩時間の合間に少しでも寝かさなければ。
「急いで帰ろう」
「なんで?まだ時間あるよ?」
「お前を寝かすためにだよ!!!」
今の俺のミッションは1秒でも早くスタジオに戻り、すぐ無理をしがちな手のかかる先輩に少しでも多く仮眠をとってもらうことであった。
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リンリン(プロフ) - オチは1番か3番希望です (2022年5月19日 16時) (レス) @page46 id: 68dd5d6199 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - アカリさん» かしこまりました。少々お待ちいただけると嬉しいです。 (2021年12月18日 12時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - ジェラートさん» ありがとうございます。参考にさせていただきます。 (2021年12月18日 12時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
アカリ(プロフ) - 石i川i界i人さんとの絡みが見たいです (2021年12月11日 13時) (レス) id: 2ff7c7d1e3 (このIDを非表示/違反報告)
ジェラート(プロフ) - オチは2希望です (2021年12月5日 21時) (レス) id: 9bd892b1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2021年10月18日 9時