文豪ノ愛情表現 『12』 ページ12
「探偵社のアルバイトをしています、伏見です。」
なるべく柔らかく、威圧感を与えないよう心掛け笑いかける。
彼女は寝台に腰掛け、人形のようにぴくりとも動かなかった顔をゆっくり此方に向けた。
「私の名は泉鏡花、好きなものは兎と豆腐、嫌いなものは犬と雷。」
犬が嫌いと聞き、太宰さんと芥川を連想させた。
「貴方は………本当にここの人間?」
「も、勿論です。」
一瞬息が詰まった。真逆、一目見ただけで私の奥底に秘めた何かに迫るとは思ってもみなかった。
笑顔が少し固くなった。
判りやすいのは難儀なものである。
「もう躰は大丈夫?何なら、着替え手伝おうか?」
少し足を前に踏み出した。すると彼女は脱兎の如く後ろに下がってしまったのだ。
彼女は警戒心が強い。だから、私のように一寸でも怪しい雰囲気を醸し出す者には触れされようともしないのだろう。
警戒心剥き出しの兎を扱う様に、丁重に彼女と接しなければ一生彼女は心を開いてはくれない。
「大丈夫、一人で出来る。」
「そっか、じゃあ其処に居るから何時でも呼んでね。」
彼女に洗い立ての着物を渡し、寝台を包むカーテンを閉める。そして医務室に置いてある机を借り、ノートパソコンを開けて今朝方、安吾さんから届いた仕事の数々を片付けていく。
無心でキーボードを打鍵していくうちに時間は経ち、彼女の準備が整った。
「気を付けてね、いってらっしゃい。」
敦くんに呼ばれ、医務室を出ていこうとする彼女に返事が来ないのを承知で声をかける。
「………………いってきます。」
私は耳を疑った。
彼女は恐る恐る此方に視線を向け、小さく手を振り出ていった。
ぎこちないが、「いってきます」と云う単純で短い一言にこれほど心温まったのは今日が初めてである。
「Aちゃん、少し手伝ってくれないッて、どうしたの?」
「ちょっと、感極って…………。」
その後、医務室にて、蒼白い光を放つノートパソコンの前で顔を両手で覆い悶える私の姿が春野さんに目撃された。
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櫻餅(プロフ) - まゆさん» コメント有難う御座います。現在更新停止中ですが、また更新できるように頑張りたいと思っております。 (2019年5月3日 9時) (
レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 続編おめでとうございます^_^面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年5月3日 1時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - ラズさん» コメント有難う御座います。現在ネタ切れによる更新停止中で申し訳ありません。もう一度お話の流れを整えて、また更新できるように頑張っていきたいと思っておりますので暫くお待ちいただけると嬉しいです。 (2019年4月30日 21時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
ラズ(プロフ) - 凄く面白いです！続き、続きを下さい!! (2019年4月30日 12時) (レス) id: 8609e55ade (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - アイカさん» 中々次の話への展開の仕方が思い付かず更新が停止している状態ですが、また書けるように頑張りたいと思っています。コメントありがとうございますm(__)m (2018年6月13日 22時) (レス) id: eb7f0e71e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2017年8月21日 13時
