猛毒を花に隠して散っていく【鬼滅の刃】 (ページ26)

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執着心の芽生えページ26

少しの風にでも、簡単に吹き飛ばされてしまいそうな頼りない少女だと思っていたというのに――目の前で繰り広げられる少女と鬼の死闘に、俺は一瞬にして心を奪われてしまった。

射抜くような鋭い眼光、幼い少女から発せられる研ぎ澄まされた殺気に体が痺れて動けない。

「兄上！」

後ろから飛んで来た、千寿郎の切羽詰まった声によって漸く我に返る。

一刻も早く鬼の頸を斬らなければ。そう思い直して刀を握り直すも、俺は不覚にも思ってしまったのだ。

彼女の闘いをもっと見ていたい、と。

何度も何度も再生し続ける鬼の頸を斬り落とす彼女の瞳は鋭さを増している。

なんと、美しいのだろうか。

気難しく、滅多に弟子をとらないことで有名なあの鷺澤殿が何故、彼女を弟子にしたのか。ようやくその理由が分かった気がする。

小さな体に秘められた強い‘生’への執着が伝わってくるあの闘いに鳥肌が止まらない。

嗚呼、欲しい。喉から手が出るほど、彼女が欲しい。

俺の手で彼女を立派な鬼狩りの剣士として育てたい。それが出来るのならば、俺は喜んで彼女を将来の継子にしよう。

技を繰り出し、鬼の頸を斬ってから彼女に問い掛ける。

俺の将来の継子にならないか、と。けれど彼女は頑なに首を縦に振ろうとはしてくれなかった。

自分は継子には相応しくない、と。

彼女の成長を間近で見ることが叶わないのは大変残念ではあるが、無理強いするつもりはない。けれどいつか俺が柱になり、彼女が無事、鬼殺隊に入隊した暁にはまた声をかけてみるとしよう。

――俺は案外、執念深いのかもしれない