煉獄家 ページ18
「どこ行くの?」
「元炎柱のところだよ。お前も来るか?」
おっさんの同期であり、元炎柱である煉獄 槇寿郎さんの元へと久しぶりに顔を見せに行くらしいおっさんに私は喜んでついていくことにした。
こうでもしないと、なかなか山を降りられないし街へも出られない。
上機嫌に鼻唄混じりで山を降り、生まれて初めて訪れる街へと足を踏み入れて私は目を輝かせた。
「おっさん、あれ! あれ買って!」
「あとでな」
見るものすべてが珍しく、目移りしてばかりな私の手を引いておっさんは先へと進んでいく。そしてたどり着いたのは街から少し離れたところにある立派な日本家屋。そこでは、目がくりくりとした可愛らしい小さな男の子が出迎えてくれた。
「よお、千寿郎」
「鷺澤さん! お久しぶりです」
あどけない笑みを浮かべて私達を迎えてくれたのは、煉獄家次男の千寿郎くんであった。
「えっと、そちらの方は確か……」
「弟子のAです。よろしくね」
「よろしくお願いします!」
礼儀正しく頭を下げる千寿郎くん。そんな彼を見て、幼いのにしっかりしているなぁ、と感心していれば、お前も見習えとおっさんに頭を小突かれた。
吉原の姐さんに、礼儀作法は嫌というほど叩き込まれてきたのだ。私だって、ちゃんと出来るのだと、口を尖らせれば再び頭を小突かれた。痛い。
「鷺澤さん!お久しぶりです!」
それから玄関先で、少しだけ千寿郎くんと話していれば、家の奥から一段と大きな声が響いてきた。
「おお、杏寿郎じゃねぇか。久しいな」
炎を連想させるような髪を揺らしながら出てきたのは、千寿郎くんそっくりの美丈夫。
おっさん曰く、この人こそが煉獄家の長男であり炎の呼吸の使い手。鬼殺隊の柱候補と噂される煉獄 杏寿郎さんの様だ。
「む、君がAくんか! 鷺澤さんから話は聞いているぞ!」
千寿郎とぜひ仲良くしてやってくれ!と告げる彼の声は相変わらずでかい上に、目の焦点が何処に合っているのか分からなかった。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2021年5月27日 0時