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ゆっくりと瞼を上げる。月明かりに照らせれて白く光る首筋に指を這わせたら、指の下で規則的に打ってる脈が伝わる。少しでも力を入れたら折れそうな細い首。乱れる呪力を整えて首から背中へと手を滑らす。
『俺にはお前しかいない』
「サト、ル…?」
約束しただろ?ずっと一緒だって。
声を潜めそっと囁く。縋るように肩に顔を埋めると、さっきまで怯えていたのが嘘の如く心配そうな目を向ける。馬鹿なまでに甘い所は最早、天性のものだろう。それが自分の首を締めるとも知らずに。
『Aは俺を独りにしないよな?』
…うん、一緒にいるよ。予想を外さない答えに折角装った表情を台無しにする所だった。ほこるぶ顔を隠しながら抱きしめる力を強くさせる。今度はちゃんと返ってくる温もりに満たされるのを感じた。
いつ消えても可笑しくない、小さな火種。
その暖かさを知ってしまった以上、前に戻ることは出来ない。
醜い呪い。いつかの呪術師が残した言葉が耳に絡まる。嫌悪した呪いのように、執拗に。
だがそれでいい。呪いは呪いらしく、狡猾に生きるべきだろ?
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作者名:みゃん | 作成日時:2022年9月12日 14時