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2日後、また鳴り出した携帯を手にする。相手はやっぱりカナエくんで、直ぐに決めなくてもいいけど一度だけ高専に来てみないかと言う提案だった。
提案よりは答えを出せないままの私に対する配慮に近いかもしれない。悪い話ではなかった。話をいくら聞いたとしても直接体験したのに劣る。肯定でも、否定でも、答えを出すのに役立のは確かだ。ただ、ここには一つ大きい問題がある。
『何んだよ』
皆には視えないことをいいことに堂々と机の上に座ってるサトルと目が合う。サトルの目は隠されてるので合ったという言葉には少し語弊があるかも知れないが、一歩でも近付くと鼻が触れそうな距離だ。お互いを見てるには違いない。
ちょっとだけ下がりペンを握りしめる。何でもないから離れて。ノートに書かれた文字にそっと視線を落としたサトルの頭が上がってる頃にはその顔に爽やかな笑みが浮かべでいた。
『やーだって言ったら、どうする?』
「……」
顎を掴まれてる所為で目を逸らすことさえ許されない。呼吸で発する微動だけでも触れちゃいそうで息を潜める。そんな私の努力を嘲笑うかのようにサトルは段々と距離を縮めてきた。
「Aさん!」
「…はっ、はい!」
そんな態度を取ってるってことはもう問題は解いてますよね?
先生に指摘され、ハッと意識を戻した。サトルの笑いを耳にしながら黒板に立つ。
…完全に嵌められた。
小学校の頃には悪戯が頻繁だったが、最近ではやらないようになったので対処方法を忘れてた。その上、一つ言い訳をすると、こういう悪ふざけは初めだった。チョークをぎゅっと握りながら、家に帰ったら注意しておこうと決心する。
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作者名:みゃん | 作成日時:2022年9月12日 14時