【歌い手】本当にお前らにあえて良かった。【能力パロ】【学パロ】【番外編】 (ページ14)

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その日から彼方を避けた。

放課後に寄っていた図書室には寄らないですぐに教室から出た後、市営の図書館か近くのカフェに入って勉強をして時間を潰していた。

彼方は私に話をしようとしてくれたけれど、私はそれを無視した。最初は女子も無視したことについて咎めていたが、自分が話せれば文句がないようだから、言う人はだんだん減っていった。

彼方と離れた事によって全てが白黒に見えるようになったようだった。
……ようだ、というだけで実際はカラーであるのだけれども、どうしても美しいとは思えない物だったんだ。

＿＿有名な絵画も
＿＿きれいだといわれている景色も

彼方と一緒だったから全てがきれいに見えていたのかなと思うと全てがストンと腑に落ちた。それでもそれを認めてはならないような気がしたのだ。

その時、兄の殉職が伝えられた。
私は彼方が好きだと言ってくれた長い髪を思い切り切った。

～～～

-卒業式-

もう彼方は卒業してしまう。

彼方は卒業式の前から女子に告白される事が多かった。私が彼方に近づかなくなったから、女子がその隙を見て近づいたんだろうと思った。

(……私も告白すればよかったかも。そうしたら＿＿)

＿＿まだ諦めがついたかも。

そう思った私は唇を手で押さえる。諦める事に慣れていた筈なのに、彼方にあったせいで……いや、彼方のおかげで人間並みに戻ってきているのかもしれない。

(でも、ダメだ。私が彼方の邪魔をしちゃ……)

何度も諦めようとして色んな対策をしてきた。

後は彼方といた時のあの鮮やかな景色を見るためにランニングをしてみたり、写真を見てみたり、美術展に行ってみたりした。

＿＿それでもあの鮮やかさには勝てない。私が見える景色は全て白黒のようだった。

N「A～！もう先輩達行ってまうで～……ってあれ？A、下駄箱になんか入っとるで。」
T「……？」
N「もしかせんでも先輩からの呼び出しィ～！？まじか！Aも隅に置けないな～！ったく、仕方ないから俺、が……ってA！？なんで泣いとるん！？」
T「……あ。」

ここは昇降口で、直以外にも誰か来るであろう場所で。私は人前には魅せれないような涙を流す。……もう、私は会う資格なんてないのに＿＿

＿＿待ってる。

ただのノートの切れ端なのに、名も書かれていないのに。それなのに確信が持てた。
見覚えのある字体で書かれたそれを読んだ時、また私に色が戻ったような気がした。