大丈夫だって (ページ31)

今日:9 hit、昨日:29 hit、合計:80,487 hit

. ページ31

side:赤

その後到着した救急車には高地が付き添いで乗って､樹は病院へと運ばれていった。

それを見送った後すぐにマネージャーがまわしてくれた車に4人で乗り込んで樹が向かう病院へと急いだ。

いつもは誰かしらが喋っていて賑やかな車内も､今は誰一人として言葉を発さず重苦しい空気で満ちている。

そんな空気の中誰かに話しかける訳にもいかず黙っていると､自然とさっきの光景が蘇ってくる。

車の轟音。

樹の叫び声。

どこからともなく上がる悲鳴。

血塗れで意識の無い樹。

真っ青な顔をした慎太郎。

幾分か冷静になった頭で思い出すと､今まで必死に動いていて感じていなかった分の恐怖が胸の中を支配した。

もし樹が今までみたいにパフォーマンスできなくなったら？

もし樹の目が覚めなかったら？

もし樹が居なくなってしまったら？

考えていけばいく程その考えは悪い方向にいってしまい､どんどん不安に駆られていく。

どうか樹が無事でありますように。

考えるのをやめてただこの言葉だけを胸の中で繰り返した。

マ「着きました。」

マネージャーの言葉を聞いた瞬間に俺たちは車から飛び出して､全力疾走で案内された所まで向かった。

そこには､ソファーに座って俯いている高地の姿と赤いランプで強調されている"手術中"の文字があった。

「高地！樹は？」

高「今手術してる。詳しい事はわからないけど…救急車の中で"まずい､出血量が多い"って救急隊員の人が言ってるのは聞こえた…」

「そっ､か…」

なんとなく予想はしていたけど、いざ言われると思っていたよりショックで素っ気ない返事しかできない。

その場の空気が重くなった時､"手術中"の赤いランプが消え､目の前の大きなドアから出てきた先生が俺たちの方へと向かってきた。