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少年はこの本丸で早くに目を覚ます。
この歳になって、初めて与えられた一人部屋。
以前は様々な刀剣の部屋を渡り歩いていた。
一人で寝起きするのにも慣れてきて、洗面所へと向かう。
大所帯で暮らしている為、必ずと言って良いほど誰かと会う。
「おはよ、ハル。今日も早いね」
「…おはよう。清光は朝から出陣?」
鏡の前で身なりを整えている加州清光。
「そうなんだよ。ほら、ハルこっち来て、髪がハネてるよ」
歯を磨きながらぼーっとしている少年の髪を整える。
「はいっ、できた」
「ありがとう」
少年、春親は加州と共に朝食を食べる広間へ向かう。
朝食の良い香りに、春親は頰を緩める。
「ハル君、おはよう。今日も一人で起きられたんだね」
笑顔で言う燭台切。
基本的に朝はいつも調理場に居るのだ。
「おはよう」
春親はふい、と顔を背ける。
燭台切は困った様に笑う。
春親は広間に居た山姥切の隣に座る。
「主は遅くまで仕事をしていたからな、起きるのは遅いだろう」
「そっか、国広はいつも早いね」
「お前もな、学校は慣れて来たのか?」
食事をしながら山姥切は尋ねる。
「まあまあだよ。問題も無いし」
叔父の側によく居る山姥切が、自分の様子を叔父に伝えて居る事を知って居る為正直に答える。
食事を終えると、部屋で着替えリュックを背負う。
玄関へ行くと、見慣れた光景がある。
「若君、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「行って来ます」
誰かしら見送ってくれるが、このへし切長谷部は毎日ここで見送りをしてくれる。
春親は門を出ると、政府へ通じるゲートを通る。
そしてそこから程近い学校へと向かうのだ。
これが春親の通学路なのだ。
春親が本丸を出て直ぐの事。
「長谷部君っ、もしかしてもう行った?」
燭台切が急いでやって来る。
「何だ、珍しいな。若君ならいつもの様に向かわれたぞ」
燭台切は落胆した様子で溜息を吐く。
「ハル君…最近素っ気ないんだよね」
「そんな事で悩んでいたのか、光坊?」
玄関の入り口から入って来た鶴丸が笑う。
「鶴さん…」
「ハルなら問題無くげーとを通って行ったぞ」
早起きの鶴丸はいつもゲートを通る春親を見守っていた。
「光坊はハルに対して過保護なんだ。俺の様にすまーとに見守る事が一番だぞ?」
燭台切自身も春親に対して構い過ぎている事は自覚していた。
だが、幼い頃から大切に育てて来た子から目を離すことは出来ないのも事実だった。
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作者名:結桜 | 作成日時:2018年1月26日 22時