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政府に預けておいた車を和泉が運転し、実家へと向かった。
山姥切は慣れているのか戸惑う様子も無い。
それ程遠くは無い実家へ着くと、春親は目の前の屋敷を見つめる。
本丸で見慣れていたが、何倍もの広さと大きな門に圧倒される。
門を通ると手入れの行き届いた日本庭園がある。
「お帰りなさいませ、若様」
女中らしき者が数名出迎える。
「ああ、ただいま」
和泉は慣れた様子で脚を踏み入れる。
「おいで、ハル。大丈夫だよ」
少し緊張した様子の春親に優しく声をかける。
山姥切も後ろから春親の背を押す。
山姥切は別室に通され、二人だけになる。
叔父の後をついて行くと、ある部屋の前で足を止める。
「失礼致します」
和泉が一言言うと、襖を開く。
和泉の後に続き中へと入ると、広い部屋の中に十数名の者が集まっていた。
多くの視線が春親に注がれる。
一番前の中心に座る男の正面に春親達は座る。
「お久しぶりです」
和泉の言葉に、視線をやる男は春親を見る。
「十三になるか？」
「…はい」
春親は目の前の人物の視線が冷たく感じた。
歳は六十代くらいだろうか、和服に白髪だが整えられた髪は品を感じさせる。
「娘によく似ているが…あれに比べて随分と落ち着いているな」
「姉さんはとても元気な人でしたからね」
和泉は笑うが、男は咳払いをする。
「審神者としての力の方はどうだ？」
「適性検査などは受けさせていません。この子に力があるとは限りませんよ」
「そんな筈は無い…娘も力だけには恵まれていた。大きいかは兎も角、無いという事は無いだろう」
男は言い切る。
「そうですよ、お嬢様のご子息ならばきっと才能があるでしょう？」
「見るからに聡明そうな子ですし」
「本家で引き取るか、私共の方で大切にお世話させて頂くと言うのも…」
口々に言う親戚達に春親は戸惑う。
「それは前にも申しましたよね。春親はこちらでも問題無く成長しています」
「問題無く、と言う水準で育てていくにはこの子は勿体無いですよ？」
一人の和泉と同じくらいの男が言う。
「この子がこちらに居たいと言っているんです。刀剣とも良い関係を築いています」
和泉は真剣な眼差しで言う。
「それは他の生活を知らないからでしょう。春親君、うちへ来れば不自由なく過ごせるし叶えられる事は叶えてあげるよ？」
男は笑顔で言う。
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作者名：結桜 | 作成日時：2018年1月26日 22時
