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夜になり、春親は叔父の部屋へ行く。
「叔父さん、おやすみなさい」
「ああ、ハル」
いつもの様に言葉を交わして眠りに行こうとしたが、叔父に呼び止められる。
仕事が終わった為、近侍の山姥切は居なかった。
叔父の前に座ると、叔父は迷った様に口を開く。
「学校はどうだい？」
「問題ないけど…」
昔から答えは変わらない。
「ハルは…現世の方が良い？」
「それは…よく分からない、考えたことない」
「じゃあここはどう？」
「好きだよ…叔父さんも、みんなも居てくれるから」
春親は迷い無く答える。
「ご飯も美味しいし…」
「そうだね、光忠のご飯美味しいね」
叔父は微笑むと「さあ、休もうか」と言う。
「おやすみ、ハル」
春親が部屋を出て行くと、タイミングを見計らっていた山姥切がやって来た。
「何か気になる事でもあるのか？」
「近頃になって、親戚の方から手紙が届いてね」
「久しぶりだな」
「君にも昔話しただろう？僕の家は代々審神者の一族で、姉さん…ハルの母親も審神者だったんだ」
専業審神者だったわけではなく、現世で仕事をしながらだった。
春親の父親とも幼馴染であり、恋人同士の二人が結婚するのは間も無くで、審神者として実力のあった彼女が春親を身籠り辞任するのは惜しまれた。
春親が生まれてからも、後任の審神者を探しながら春親を育てていた。
そして、春親の六歳の誕生日の日が審神者としての最後の日だった。
父親は帰りの遅い彼女の迎えに行った。
春親は家で叔父と共に二人の帰りを楽しみに待っていた。
しかし、その日二人が帰って来る事は無かった…。
交通事故に遭い、二人は命を落としたのだ。
「その後直ぐに親戚が集まって話し合われたのは、ハルを誰が引き受けるか…」
叔父もその頃には審神者として慣れてきた頃だった。
「多くの親戚が、姉さんの子であるハルを引き取りたがったんだ」
山姥切は表情を歪める。
「何も分からず、笑うことも出来なくなったハルの意思は尊重され無かった…そんなハルを会った事もない他人に任せる訳にはいかなかった」
あの時の事を思い出しても胸が痛む。
「簡単に言うと、黙ってハルを連れて来たんだよね」
笑って言う主に、山姥切は呆れる。
「それがまた面倒な事になると分かっていただろう」
「方法はともかくとして、間違った事をしたとは思っていないよ」
「ああ、ハルが笑っているならそれが証拠だ」
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作者名：結桜 | 作成日時：2018年1月26日 22時
