75 ページ25
.
数秒の無言
吐き出した息であまりいい事でないのは分かる。
.
「どこで知った？」
「いや……会社にいるとそう言ういろんな情報が入ってきて。」
信ちゃんはグラスを持ってから視線を無数に置かれているボトルに向けてから言う。
「弟はおる。ただ、もうずっと会ってへんからどうしているか……分からへん。」
「離婚かなんか？」
「事業の不渡り出して離婚したんよ。」
予想外の言葉に俺は黙って信ちゃんを見ると気にするなって顔をしてきた。
「昔やで？オヤジの工場がそんな感じで、でもオカンは俺だけ連れて出て言って弟はオヤジの所に残ってどうなったんかは俺は聞いてへん。」
「工場はどうなったん？」
「閉鎖。」
「じゃあ……弟さんは？」
「さっぱり。工場閉鎖してオヤジがいい死に方をしなかったのをオカンが知って探したんやけどな。」
「弟さんの名前って覚えてる？」
「……弟？」
「そう、弟。」
信ちゃんは一気にグラスのアルコールを飲んでから俺に教えてくれた。
.
「隆平。」
.
血の気が引いて微かに唇が動く
「嘘……」
「タツの言うてる隆平と同じか分からへんで。写真見せてもらったけど弟か？って感じたから名前が同じだけやろ。」
「そ……そうやけど。」
「隆平と一緒だったのは俺が小学生で向こうが幼稚園でそこまで記憶が、な。」
小さく頷くと信ちゃんは新しい煙草を銜えてから言う。
「ただ……」
「なに？」
「やけに覚えているのは、小さい時に手術したんよ。」
「手術？」
「アイツ身体弱くて赤ちゃんの時に手術したんよ。肩甲骨辺りに大きな傷があったけど、もう成長したからそんな傷もなくてええ感じなんちゃうかな。」
信ちゃんが笑って言う言葉に俺は記憶がよみがえってくる。
あの場所にある傷……
「あとさ、村上って……その……」
「オヤジや。オカンはほんま離婚したくなかったからそのまんまでおった。」
小さな点と線がつながった気がした
「信ちゃん……俺……信ちゃんの弟のこと知ってる。」
その言葉で俺が伝えたい意味が分かったのかもしれへん。ゆっくり視線を向けて表情が歪んでいく。
「分からへん、俺……どうしてこうなっているのか。」
本音やった。
俺の知っている隆平がここまで絡んでくるなんて想像もできへん……
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瀬奈(プロフ) - 8七色8様コメントありがとうございます。お返事が遅くなりすいません。自分でも初めてのこの手の作品で苦戦しながら書き終えました。褒めて頂けて嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年3月19日 11時) (
レス) id: d24f83f6f0 (このIDを非表示/違反報告)
8七色8(プロフ) - 深夜に初コメント失礼致します。凄くスリルもあってあっという間に読んでしまいました。あっという間なのに読み応えがすごくあって最後これからは幸せが待っているのかな？と心がほっこりしてしまいました。素敵な作品に出会いました。 (2020年2月22日 1時) (レス) id: fa7d72189f (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - 抹茶クレープ様 コメントありがとうございます。自分の書きたい作品ばかりですが好きと言っていただき感謝です。これからも読んでいただける作品を書いて行けるように・・・がんばります。本当にありがとうございます。 (2020年2月12日 16時) (レス) id: d70537b0b4 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶クレープ(プロフ) - 長くなってしまいすみません、、、 (2020年2月11日 22時) (レス) id: 693ce8b609 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶クレープ(プロフ) - 完結おめでとうございます！私は瀬奈さんの作品が大好きです！毎日更新されるのが楽しみで仕方ありませんでした！これからも瀬奈さんの書きたい作品を描き続けてください！わたしはどんな作品でもすべてよみます！本当に瀬奈さんの小説が好きです！！ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 693ce8b609 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬奈 | 作成日時：2020年1月17日 16時
