月逢雲夜四巻 (ページ1)

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百一ページ1

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瓦版屋が話を始めると町人が集まってきて皆が見ていく。

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『花街で大騒ぎになった出来事を御存じか？あの新月の夜更けに起きた出来事よ。色男を取りそろえている茶屋から花形男が攫(さら)われたと大騒ぎ。攫ったのは真蛇(しんじゃ……凶悪な鬼の面)の面をつけ店の男を抱えて屋根を伝いわたり逃げていく。追いかけたのは店の力自慢の男たち、同心に岡っ引きまで総動員して追いかけて行けば逃げ場のない大川(隅田川)までたどり着く。そこで何が起きたか！攫った男の首元から大量の血が!!!面のはずなのに真蛇の口元は真っ赤になっていて食いちぎった!!!店から来た力自慢の男たちは救おうと刀を振り上げれば真蛇の前にねじ伏せられ真蛇は本性を出した!!!!同心が辿り着いたときは川べりが真っ赤な血の海に。恐ろしい光景におののき逃げてきた力自慢の男は言う『鬼が出た。』と。そう、真蛇は鬼だった。』
人々が声を上げ悲鳴なような声を上げれば瓦版屋は笑って紙を上げて言う。
「続きはここに書いてあるから。恐ろしい事が続くから戸締りはしなきゃいけないですよ。」

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瓦版屋の話術にまんまとはまった人々は金を払って読んでいけば声を上げていく人や口々に恐怖を口にして行く。どんどんと買われていく中で「1枚。」と金を出して求めてきた人に即渡すと男は瓦版を
見入っていく。

『鬼は陰間の男の首を噛みちぎり命絶え絶えに。高笑いをし大川(隅田川)に身を投げれば川面に浮かぶ真蛇の面の周りに真っ赤な色となり……』

まるでどこかの物語のような出来事がつづられていくのを見て「恐ろしい。」なんて口にすると周りにいた人々も同じような反応をしていく。男は胸元に入れてから花街の方に行けば瓦版を見て気になっていたのだろう。どこの店の男がこのような状況になったのか？と、ふらふらと歩く人の多さに驚きつつも不意に目の合った店の男に手招きをされ苦笑いをして行くと盛大なため息をしてから口にする。

「りゅうさんも見たんですね。」

「見てびっくりしたん。紫苑が急に店からいなくなったのは身請けやとずっと思うていたんよ。」

「身請けならどれだけよかったか。実際は……盗賊に奪われたって言ったらいいのか。」

盛大なため息の後に「これはほんまです？」そう小声で言うと男は左右に首を振る。

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