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桜が咲いて、もうすぐアジサイの季節が来る頃に僕はたつくんに言うたん。

「庭園の少し外れに教会があるの知っている？」

「教会？」

たつくんが驚いた表情になったから僕は続けて言うたん。

「たつくんが来る方に茶色い建物あるの知っている？」

「あ、見たことある。オトンといつもなんの建物だろう？って、言うてたん。」

「そこが教会なんよ。」

「へぇ。」

車いす進めていく先にあるのは病院の地図。病棟、診察施設、緩和ケア施設、家族の宿泊施設まであるそんな中に裏手の庭園のその場所に教会があった。

「ここに今から行かへん？」

急な提案をしたのはここ最近たつくんの表情が不安顔を多く見ていたから。

お母さんの様子が良くないのかなって僕の勝手な推理なんやけど。

「今から？入れるの？」

「自由に入れる。」

なんて僕が言うとたつくんは大きく頷いた。

庭園を進んでいくとすぐに見える茶色い建物はレンガで作られていてかなり時間が経過したもの。

「何かでそう。」

なんて笑って言うから僕はスン顔で言うたん。

「出る。」

「うそ。まじで？怖いやん！」

むっちゃへっぴり腰になるたつくんを見て僕は笑って言うたん。

「怖いところになんで行くねん！」

「出る言うやん。」

「冗談やし！」

完全に腰が引けたたつくんと一緒に教会の入り口に来る。僕はスロープを使って上がるとたつくんはドアを開けてくれた。

古い木のドアを開けるとそこはステンドグラスの光が室内に注ぎ込み、マリア様の像の傍に飾られた白い百合の数々……祈りをささげる場所は静かで空気も何か違う気がする。
車いすスペースに僕が止めるとたつくんはその隣に座って見上げる。

「オカンの調子が良くないって言われたん。」

小さい声で言う言葉に僕の推理は当たったと思いながらも僕は手を合わせて言うたん。

「たつくんのお母さんが良くなりますように。」

泣きそうな顔で見てくるたつくん。

「たつくんのお母さんが良くなって退院出来ますように。」

小さく頷いて、たつくんも言うねん。

「オカンが元気になりますように。」

神様に届きますように僕もたつくんも祈りをささげた。

でも、最後にたつくんは言うてくれたん。

「りゅうちゃんが元気に退院出来ますように。」

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