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「ただ……おらんかった。」

静まり返った部屋
たつくんは先週大事な人の場所に戻り約２か月少しの生活は終了した。

元に戻った

通常の日々に戻った。

だけど、ちょっとだけ人と一緒に生活すると言う心地よいものを覚えてしまったせいで妙に寂しくなってしまう。

「あれだけ気を付けていたのにやっちまった。」

なんて言うとグラスに入ったアルコールが半分になっている目の前の人は苦笑いをしてから言う。

「だから、マルちゃんは優しすぎるの。」

「小山くんに言われたくなーい。」

僕の悪態にも気にせず片肘ついて人の流れを見て言うねん。

「僕らがこうして話していても世間は気にも留めない。ここで何が起きても世間は気にもしない。そんな経験してきたでしょ？」

なんて言う言葉に僕はタバコを銜えてから小さく笑う。

「そうやね。」

「色々なサバイバーがいる事を世間は知らないんだから。」

空いたグラスがテーブルに置かれたと同時にライターを置き僕は深く息を吸い込んでから紫煙を吐き出せばゆらゆらと漂う。

「魔が差したん。」

「マルちゃんらしくない。」

「それ言います？」

「ブラックマルちゃんだったら絶対受け入れないだろうに。」

「ブラックって言い方が酷すぎへん？」

「なら……黒い方。」

これも言い方どうなん？なんて思いながら苦笑いすると小山くんは僕を見て言うねん。

「人を寄せ付けないオーラバンバン出すマルちゃん。」

「それは余計な事を知りたくないだけですって。」

「悔しいから？」

「それもありますね。」

「知らないことだらけで嫌だもんねぇ。」

「小山くーん、今日はおしゃべりの毒率高くないです？」

僕の言葉に小山くんはゆっくりとため息をして言うねん。

「女の子攻略できないんです。」

「また、今度はどんな子？」

「オフィスレディ、略してオーエルさん。」

「またそこはハードル高い。」

「フリーターの俺と釣り合わないと断言されまして。」

「そこはねぇ、諸事情あるんですよ。って、言うのはあかんの？」

「付き合う前に？」

「まずは正直に。あ、でも言える人なら言っちゃうのがええかも。」

そんな言葉を言うと小山くんは軽く片眉上げてから僕を見た。

「毒親のせいでメンタルおかしいんです。て、言うの？」

サバイバーは無数にいる。
何もないように見えて心に傷を背負って生きている。

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