A-EN (ページ42)

今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:11,785 hit

42 ページ42

.

「そんな声でちゃうよね。」

なんて笑って言う言葉なのか全く理解できへんけどたつくんはいたって普通に僕に言うたん。
淡々と、面白おかしく。

「つまり……専門卒業後に勤務したサロンで色々と経験値積んでいく中でお客さん数人と関係持ってそれのお陰でアシスタント上位に駆け上がって給与はええし、幸せ万歳だった……という事ですかね？」

要約を僕が言うとたつくんは「ほぼ正解。」なんて笑ってから生ぬるくなった缶ビールを一口飲んで
続ける。

「専門の時から付き合っていた彼女がおってサロン勤務の頃は金がなかったんよ。で、ルームシェアという名の同棲をしてたんよね。段々俺は仕事は忙しくなり、家もたまにしか帰らない。ルームシェアと言う形式なのになんでか奥さんみたいな感じで正直相手が重くて、重くて。自分はもっと頑張りたいのに彼女の希望はそうやないって言いだして面倒だなって思うて別れを切り出したら包丁持ちだして切り付けられた、ざっくりとやられたのがこちら。」

想像以上の案件
包丁で切りつけられたって修羅場やん
あっさり言うているけど、結構なヤバイ事を言うているやん。
結婚指輪見せるように右手の甲を見せて指でお知らせされたも非常に困るんですけど……笑うに笑えへんから。

「仕事が出来へんって気づいたのはサロンに復帰した時やった。５人カットできる日があれば、翌日１人しかカットが出来へん。右手の感覚が戻らんと仕事が出来へん、疎らな感じで客の予約が取れないって状況になる……ほかの作業で何とかしようと思うても指が動かへんから何にもできへん。店におっても雑用も雑用、メインの仕事が出来ないってなるといる意味ないねん。シザー握りたいのに重たくて動かせなくて無意味なんよ。客は気にするなって言うたけど、俺は気にする。サロンにおっても仕事が出来ないのは地獄や……で、辞めた。」

多分

たつくんは面白おかしく言うているけど実際はしんどいのがそこにあって誤魔化しているんだって言うのは僕にはわかる。

サロンの仕事だってほんまは続けたかったに違いない。

足を引っ張るのが見えたから辞めたのも。

.