百五十一 ページ1
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「京は物騒な町や。昔は鬼も出たな。」
「それな。」
素直にりょうが言うと侯隆は指で相手を差すと素直に頷く。
「鬼……ですか？」
「昔やで？隆平が言うてたん、ずっとずっと昔に鬼が出たって。」
「どれくらい昔です？」
「平安の頃。」
「かなり昔ですね。」
「隆平が鬼本人やん。って、言うたら笑っていたけどな。二百年前の話だけど。」
「年数がおかしい気がします。」
忠義の言葉に侯隆は素直に笑ってしまう。
「確かに、普通に考えればおかしい。割と慣れてきたん？忠義も。」
「だって、りょうさんの話は昔話過ぎて。」
「はぁ？」
「六月(むつき＝六か月)で何度昔話を聞かされたか。」
「ほんまに腹立つな、忠義は。」
「普通ですよねぇ。でも、鵺ってなんです？」
「妖怪やね。猿の顔、狸の胴、虎の手足を持ち、尾は蛇。」
侯隆はそんな言葉を言うとりょうは頷いてから言う。
「見た人は文献通りの姿やった言うねん。妖怪がそんなにここに出る？妖怪より怨霊の方が多い気がするんやけど。」
「怨霊？」
「浮かばれず亡くなった人はかなり多いで、ここは。」
呟くように言う言葉に忠義はそこが江戸の空気と違うと改めて思う。
生活の仕方も違えば考え方も違う。
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「そう言えば章ちゃんは三条の屋敷に戻られてからどうされています？」
摂家の交友はほぼない以上、立ちまわれるりょうにそんな質問をぶつけると小さく笑って言う言葉は予想もしない言葉だった。
「章大は御所に通っている。」
「御所に？」
侯隆の言葉にりょうは息を吐き出してから頷く。
「なんでも、三条家に書物の整理を依頼されて。それで章大と数人が御所で倉庫整理をしている。」
「裏はアリか？」
「ないと思うで。章大を行かせたのは三条のおっさんだし、江戸で修業した息子を見て欲しいって言うのはあるかもしれへん。一緒に行っているのも分家の奴らだから下心なしやろ。」
「それなら安心だけど。」
京の考えは色々と難しいと思いながら忠義はりょうが置いた地図を眺めていた。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2023年2月22日 16時
