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中学までは墓参りはイベントの一つみたいで、終わったら行きつけの寿司屋で飯食って甘味処行くのがコースやった。高校で実家を離れてからは行くことなくなって今に至る。


アイツがここに眠ることになっても来てなかった。
なんせ場所があまり分かってなくてこれも思い出したくないから来ているのかもしれへん。
妹が霊園の場所と区画の連絡をくれたのは話の流れで。






――――行くか。





なんて重い腰を上げて仕事の合間の空き時間、店で買ったアイツの好きな花を持って目的場所に来ると何となく思い出す。






緩やかな坂道も妹達と歩いた朧げな記憶。
桶と柄杓を借りて目的地に着いてすぐに振り返ると秋の空気に変わった風が頬を撫でていく。歩道にあるのはきっと桜の木だと思う。






アジサイや無数の花々があり霊園にしては自然を感じられる。








何で思い出したくなかったか気づいて行く。






そうやった








代々亡くなった人の戒名に名前や年齢が記載されておるけど、墓誌に母の名前がないのに気づいたからや。アイツが何気なく言った言葉に凍り付いたのは母だったな。







俺の母はここに眠る事を許されなかったって言う事実を毎回見るのが嫌やったん。









アイツの疑問に父は気にせず、母は敢えてそこは触れへん。







俺は気付き、嫌で嫌で仕方なかった。







アイツの名前





亡くなった年齢







7回忌過ぎたら忘れてあげるのも成仏の一つだと言われたけど、若くなくなった場合はそうもいかへんって。







忘れるのだってむずいで。






水をかけ




花を生け




線香を定位置に置いて手を合わせる。





ここまで来るのに何年かかったんだか。





バカにしているやろ?






あほだって笑っているだろ?






あっちの墓にあるのは気にしているで?





どれくらい心の中で話したんだろう。







息を吐き出して花を少し見栄えよくして振り返った時やった。





.








桶が落ちかすかに残っていた水が地面に吸い込まれていく。







突風に近い風が通過した時にアイツの声が聞こえた気がする







アイツの好きだった人がそこにいる







どこまでも俺は惨めになっていく気がする。







どんなに足掻いても俺は永遠に兄貴で彼にはなれない。

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瀬奈(プロフ) - うずら様 コメントありがとうございます。動き出しました。やっと、ここからどう動いて行くのが4でもよろしくお願いいたします。 (2022年10月23日 22時) (レス) id: e0d9c8d2ca (このIDを非表示/違反報告)
(名前)うずら(プロフ) - わわわわ💦動き出しましたね。本当に楽しみです。 (2022年10月22日 10時) (レス) @page50 id: 916cc9618b (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - うずら様 コメントありがとうございます。ゆっくりですが楽しんでいただけたら幸いです。 (2022年8月4日 14時) (レス) id: e0d9c8d2ca (このIDを非表示/違反報告)
瀬奈(プロフ) - kkoyanagi様 コメントありがとうございます。泣顔頂きました! (2022年8月4日 14時) (レス) id: e0d9c8d2ca (このIDを非表示/違反報告)
(名前)うずら(プロフ) - 彼はどこに?続きが楽しみです。 (2022年8月3日 17時) (レス) @page7 id: 916cc9618b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬奈 | 作成日時:2022年7月19日 16時

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