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――――もう、この仕事頼まれても絶対やらんで？
そう横山くんに啖呵を切ったのまでは覚えている。
それ以降の記憶はほんまなくて何をしたんかマジに覚えてない。
ずっとずっと昔に捨てたもう一人の自分を引きずり出したから。
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チャイムがずっとなっているのに「うっさい！」なんて言うてもドアの向こうには聞こえるわけなくて転がっている缶ビールを避けてインターフォンのボタンを押そうとした時に声にならない声を上げた。
「な……なんで？」
ドアを開けて直ぐの俺の言葉にそこにいる人はぽつりと言う。
「亮ちゃんから連絡が来まして、気になって。」
「え、いや、あれは仕事ですし。いや、その前になんでここ？いえ、なんでここに？」
むっちゃパニックになっている俺を見てゆっくり言う言葉は意外なものやった。
「章ちゃんに。」
そうだ、ヤスはこの家を知っていた。
だからって何も言うことないやん。
どうしたもんだって怪しい俺の動きはきっと某アニメのスタンド使いのようにうにょうにょ動くしか術はない。
もう、なんで言うたん！
なんで、教えちゃったの！
そんな状態。
「迷惑でした？」
「い、いえ……こんな夜中に来られたことに驚きまして。」
「この時間にならんと帰ってへんって亮ちゃんが言うんで。」
俺はあんたよりさっさと帰っているからここまで遅い帰宅にならんし！なんて、心の中で吠えても意味はないし午前0時で周りに迷惑やって思うたら「どうぞ。」としか言えなくてドアをしっかり開けた。
年収いくらか分からない丸山先生が家賃57000円管理費別のしょぼい俺の部屋にいるっておかしい言って思うんよ。丸山先生の作業部屋より狭いって思うこの1Rにようこそ言えるわけないやん。
「ちょ、ちょっと散らかってますけど。」
さっきまで飲み散らかしていた空き缶を大慌てで袋にぶっこんで座るに難しいような場所。
「はは……狭くてすんません。」
何て言うと「大丈夫です。」なんて言われるけどきっと大丈夫やないって思ってる、そう感じる。クローゼット開けっ放なしでもう汚いですよね、すいません、土下座させていただきたいって心の中で思うんやけど丸山先生はじっくり見ていくんです、止めてくださ……泣きたい。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年3月23日 16時
