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結局、悩んでも悩んでも答えは出なくて先生には『断ってもいい。』言われたけど、断る理由が見つからず受け入れるしかなかった。
横山くんの満面の笑みを見たら、これ俺が断ったら別の会社に持って行かれるから必死だったんやな。
そう思いながらスタジオの隅っこで眺めていた。
今日は見学、明日、本番。
見学だからこそ、松本先生と話せる絶好のチャンス！
このチャンスを失いたくなかったから真剣に撮影現場を見学していると、いやー、最近現場にいないせいか色々な人を見てニヤニヤしている自分は完全にヲタクのレベルかもしへん。
「椅子に隠れてなにそれ。」
背後から聞こえた声に俺は振り返ってみれば主役の1人がそこにいた。
「なんだ、松本先生じゃないんか。」
がっかり口調で言うたら「はぁぁぁ？」なんて文句口調で来たんやけど。
「ちょ、俺やで？」
「RYOさんね。」
「その反応おかしくね？」
「俺は松本先生に会いたい。申し訳ないが亮さんに会ってもテンションは上がらない。」
きっぱり言い切ったら隣にしゃがみ込みじっと俺を見てきた。
「なんで？」
「そりゃ、あこがれの松本先生と顔を合わせるなんて奇跡なんだから。」
「分からへん。」
「俺らみたいな末端なアシスタントからしたら松本先生や木村先生は神！いいか、アーティストはそう言う神と気軽に話せるけど、俺ら末端アシスタントは声をかけてもらえるだけでもう何かこう……パワーをいただけるんだって。」
「怪しい人間すぎへん、ゆゆちゃん。」
「……お前と口はきかん。」
「なんで？」
「俺は今、大倉であってゆゆではない。」
きっぱり言うてアシスタントの皆様の動きを見て俺はうっとり。
亮さんが床に座っているのは分かっている。
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視線も向けられているのも分かっている。
俺はアシスタントの皆様の動きの方がほんまに大事。
あぁ、この世界に戻りたい。
学びたい。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年3月23日 16時
