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「知らなかった。」


「兄弟共々お世話になるってなんだかですけど、亮ちゃんも喜んでいましたよ。」




亮さんは横山くん経由だからしっかりした仕事なんですけどね、丸山先生は全く違うけど。





「フリーのカメラマン?」





そんな疑問を投げかけられ俺は「違いますよ。」そう返事をしたと同時にレンジから音が聞こえ次の作業をしながら答えた。




「喧嘩して事務所辞めて今はバイト生活。フリーのカメラマンなんて言えるほど稼いでもないですって。」




「売り込みとかは?」




「色々チャレンジはしているけど、難しい。グラビアカメラマンで行くのか、個性を持って行くのか、悩みながら作品を上げていく。コンテストに出してはいるけど特別賞止まり。もっと上を目指したくても何かが足りないって毎回言われて、なにが足りないか探している最中。」






俺の話を黙って聞いていく先生を見て俺は言う。




「結構悩んでいるです。」




そう言うと「そうなんや。」と口にしてから先生はタブレットをテーブルに置いてから椅子に座って小さく息を吐き出す。





「僕も悩んでますよ。」



「分かっています。」



「ならよかった。」






屈託ない笑顔を向けられてどうしたもんだって思うんだけど、たまに先生の年齢が俺より年下に思えてしまう。悩みは最近最後のページが書けないって言うて暴れているのを帰る間際に毎回見ていますから。






本日のご希望の夕飯、肉じゃがと高野豆腐の煮びたし、金目の煮つけを完成させて昼飯はどうしようか冷蔵庫を眺めている時だった。



「大倉さん、時間まだあります?」



そう言われて時計を見ると一応まだ時間には余裕がある。



「大丈夫ですけど、どうしました?」



「昼ごはん、外で食べません?」


「締め切り大丈夫なんです?」


「大丈夫、息抜きが欲しくて。」


昨日も息抜きしていますよね?



まだするん?



大丈夫なん?



そんな気持ちでいるけど、丸山先生が大丈夫と言うのならいいとするか。



「どこ行くんです?」




「近くにガレットの美味しいカフェがありまして。」




「おしゃれな店を知っていますね。」





笑って言うと「たまたまですって。」なんて言うけど、俺みたいにコンビニ生活と全くちゃうで。




「じゃあ、行きましょう。絶対美味しいって言いますから。」




むっちゃ笑顔で言われて俺は「はい。」なんて返事を返した。




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作者名:瀬奈 | 作成日時:2021年3月23日 16時

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