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「ゆ……」
思わず声が出そうになって口元かくしてからもう一度見ると俺がおった。
いや、俺って言うかゆゆちゃんなんやけど、チェキ撮影のあの写真がなんでかデスクに飾ってあった。
―――ひぃぃぃぃぃぃｌ
心の中で叫んだけど、チェキをじっと見入る。
いや、写真なると化粧の粗が目立つん。これじゃあかんやん、陶磁器のような肌だよ、韓国のモデルさんみたいにならなきゃ意味ないって、これじゃあ金もらったらあかんやん。
「大倉さんどうしたんです？」
背後から聞こえた声に「うえぇぇぇぇ。」なんて声を上げて先生を見るとニコニコしているのがよくわからん。
「こ、この写真は彼女ですか？」」
震える指でチェキ写真を指さしすると先生は「あぁ。」なんて言うてからニッコリ笑って言う。
「女装カフェのお姉さんです。」
「じょ、女装？」
棒読み感満載で言うてしまった。
「僕も初めて連れて行ってもらったんですけど凄いですね。」
「ど、どう凄いんです？」
まさかこんな所で聞くなんて思わんかった。掃除機のスイッチを止めて丸山先生を見るとニッコリ笑
って言うたん。
「そのお店で働いている方々は綺麗でしたよ。ドラッククィーンのお名前の方はパフォーマンスのイメージが強いですけど女装家はまた違った感じに思えますよね。化粧もきつくないしナチュラルだし、その辺にいたらほんま女の人って思える人もいました。特にゆゆちゃんなんてまじまじと見ましたけど、女性かと思いましたから。」
褒められているんだと思う。
そう、褒められている。
でも……なんか自分的に満足しない。化粧だけじゃない、ピアスもちょっと違う。って、ここで自分にダメ出しをしているんだろう。
「好きになりそうです。」
はいぃぃぃぃぃぃ？？？
心の中で全力で叫ぶよね、いや、叫ぶに決まっているでしょ？
「好き？？女装家さんを？？」
ビビりながら言う言葉に先生はまたニッコリ笑って繰り返し言うたん。
「そうです、好きに。」
いやいや、それはアカンでしょ？
「でも、思っているだけですから。」
「ですよね……」
「なんで大倉さんが驚いているんです？」
「え？は？いや……先生はそっち系なのかなって。」
「どうでしょ？そうそう大倉さん、ゆで卵ゆでといてくださいね。」
「了解しました。」
頭の中が混乱中のせいで先生ご希望の半熟卵でなく完全なる方ゆで卵が出来上がってしまい思いっきり残念な顔をされてしまった。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年3月23日 16時
