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電話で言うたことが起きるなんて思いもせんやん。
冗談のつもりで言うてた言葉が現実になるって京都市内そこそこの大きさなのに。
背後にいる3人の視線は誰?状態で、倉田さんが慌てて言うた。
「会社の先輩。」
先輩はジャージ、サンダル、うっすら髭の二日酔いですけどええですかね。
「大倉さん、ものすごいラフ。」
「そりゃそうやん、実家やし。」
「実家？」
倉田さん首をかしげて背後に書かれている寺の名前と非公開の札を見て手に持っていた観光本を見詰める。背後の友達も同じことしてておもろいんやけど。
「非公開なんですか？」
「うち？」
「はい。」
「うちは非公開。」
「この辺りの全部拝観できると思ってました。」
友達の言葉に俺は小さく笑って通りに出てから倉田さんの持っていた観光雑誌を借りて説明をした。うち以外に3つ非公開になっている事と、その先にある寺1つは期間限定今週末で公開が一時終わる事、主たる寺の奥で秋の公開で襖絵が見れることを伝えるとむっちゃ喜ばれたんやけど。
「ありがとうございます。今日はこの後、比叡山まで行くので頑張ってきます。」
「随分とハードやね。」
先に行くねって3人が言うて先の寺に向かって行くのを俺は黙って見てしまう。
「つぐみさん、行かなくえええの？」
「い、行きますけど。大倉さんに会えるってなんか嬉しくて。」
「笑うより、びっくりの方やな。」
「かなり。大倉さんの実家がお寺さんだなんて。」
「オカンが守ってるん。」
「そうなんですか……あの……ここにある仏像って。」
「菩薩様。」
「そうなんだ、見たかったなぁ。」
「俺が勝手にどうぞって言えへんからなぁ。」
「その、菩薩様ってお顔見れるんですか？」
「顔？」
「あの、よく聞くじゃないですか。基本、扉を閉めていて大事な時だけ開くって言う。」
むっちゃ真剣な視線向けられるんだけど、俺は落ちている枝を拾ってからゴミ袋に入れて答えた。
「そのままいらっしゃる。」
感心した顔で見られたんやけど、場所によってはお顔を隠しているのもあるもんな。御開帳の時期でないとお顔を見れないとかあるあるやし。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年1月18日 20時
