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「不倫だったん、俺と佐野さん。」
完全に固まった。
すぐに言葉が出なくて章ちゃんは困った表情で俺を見つめる。
「え……嘘やろ。」
「ほんま。不倫してたん俺。」
「彼女は奥さんだったん？」
「そう。」
「え？どういうこと？」
「知らなかったん。結婚していた事。」
「だからって……」
「それに佐野さんの旦那さん単身赴任で海外におってそんな理由で付き合っていた。」
「いや、それってあかんやつやん。」
「分かってる。」
「バレたん？」
「ちゃう、旦那が戻ってきたから終わったん。」
「はぁ？いや、だからって。」
「不倫はあかんって言いたいんやろ？」
「そうやって。」
「俺もよくわからん。気が付いたら相手のこと好きになってて愛してて……そんな感じ。」
目の前に置かれたハイボールを受け取ってから少し乾いた喉を潤 してから章ちゃんを見てから小さく息を吐き出した。
「なんで好きになったか俺も分からんねん。なんで愛したか分からんねん。流されたって気もしている。」
「忠義。」
「本社に戻るなんて思わんから最初はこのまんまで忘れて気持ち切り替え出来るって勝手に思っていたんやけど、まさか本店勤務やん。本社なんて彼女おるから顔を合わせる機会は多いから出来るだけ避けて過ごしてる。でも、会うと苦しくてしんどくて泣きそうになるん。弱い自分やって思うんやけど、納得して別れてへんから冷静に保つのがここまでしんどいとは思わんかった。」
「まだ……」
素直に頷くと灰皿に置いたままの煙草を吸ってから俺は一度頷いてから小声で言うたん。
「3年未練引きずってるってイタイ奴よなって思ってる。」
「結構イタイ奴やで。」
「自分でわかってるから言うなって。」
「でも、本気だったから余計なんやろ？」
俺は小さく頷く。
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年1月18日 20時
